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勇者たちの歴史
西暦編
第八話 リミテッド・オーバー@
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。これは、作戦の隙を突いてバーテックスが四国に侵入してくる可能性を考慮しての判断だったのだが、もし二人もいたならば――――そう思ってしまうほど、結界内のバーテックスは多かった。多すぎた。
 それでも、要請を突っぱねることなどできるはずもない。
 護衛にしても、訓練期間は短くまだまだ不安も多い。なにより、バーテックスの有無が作戦の成否に影響するのは明らかだ。なら、全てを倒すことができなくても、数を減らせば減らすほど、危険性は低くなる。
 そのはずだ……いや、そうであってくれ。
 荒れ狂う質量の嵐のただ中で、勇者たちは少しずつ、だが確実に敵の数を減らしていった。
 その速度は、五分という限られた時間で敵を一掃するにはあまりにも遅すぎた。恐らく、彼女たちがもっとリスクを負うような戦術を取っていれば、もっと多くの勇者がいたならば、結界内のバーテックスを倒し尽くすこともできたのかもしれない。
 だが、これはあくまであり得なかったIF(もしも)の話。
 現実として、勇者たちではバーテックスの殲滅には足りず。
 しかし、結界内の敵の残数は、僅かな間に数えられるほど減っていた。
  

「……勇者の概念武装には、バーテックスへの特攻効果があるのか」
 そびえ立つ水晶の柱、その一つの上。
 士郎は絶好の狙撃ポイントに陣取り、眼下のバーテックスを次々と射抜いていた。
 高さ二百メートルに届く位置からであっても、鷹の眼は瀬戸大橋の上の砂一粒たりとも見逃さない。勇者を襲おうとする進化型を処理しながら、彼女たちの振るう武装に士郎の関心は向けられていた。
 蒼い戦装束の勇者の、研ぎ澄まされた白刃の太刀。
 紅い戦装束の勇者の、呪念滲む深紅の大鎌。
 桃色の戦装束の勇者の、両手を覆う手甲。
 そのどれもが、一撃で小型バーテックスを屠っている。
 それは、勇者当人の力や技術によるものだけでなく、彼女らの武器そのものがバーテックスを倒す為だけに作られたものだからだろう。
 概念武装の一種、宝具など伝承に残る武装そのものではなく、元となる伝承の要素を複数組み込むことで真作の力を宿す模型。引き出せる力などは限られるものの、用途が明らかであれば必要な要素を意図的に選び抜くことで、特化した性能を発揮する。
 勇者の武器は、その模型を更に打ち直した改造品に近い。
「勇者の個々に合わせた改造礼装……俺が投影したところで、真価は引き出せそうにないな」
 放つ魔弾は、既に八を数えている。
 飛び出した赤原猟犬(フルンティング)が、勇者たちの直上で形成されかけていた個体を三方向から撃墜したのを確認して、士郎は微かに眉を顰めた。
 彼の視界、そのほとんどを覆い尽くすほどいたバーテックス。
 殲滅開始から五分あまり、その姿はほとんど視認できないほど減って
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