ファリクス邸の怪 1
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視の触手が伸びる。
レプラコーンがどんな呪文を使ったのか、その効果はすぐにわかった。
【ファンタズマル・フォース】。対象に正気を失うような恐怖に満ちた冒涜的な幻影を見せる高位の幻覚魔術。今までの【セルフ・イリュージョン】によるこけおどしとは訳がちがう。
「?!」
常人ならば狂気に誘われる幻影を見せられるところを、秋芳の強い精神が退ける。
その瞬間、秋芳の精神とレプラコーンの精神とが触れ合う。
一瞬だけだがふたつの精神が交錯し、秋芳はレプラコーンの心の中を見た。
撹乱、狂騒、騒動、騒乱、大混乱――。
そして――孤独。
他者を混乱させたいというレプラコーンが生来持つ衝動と、独りでいることの寂しさがおなじレベル存在していた。
本来ならばありえないことだ。
「おう……」
「うわっ」
刹那の刻におたがいの記憶が交わる。
「おまえ、人だったのか」
「あんた、オンミョウジっていうんだね」
「ピートというのがおまえの名か」
「……」
レプラコーンの顔から悪戯じみた表情が消える。
「まだまだ遊び足りないのかよ、ピート。だが、このままでは本当に死ぬぞ。おのれがおのれでなくなることこそ、本当の死だぞ。いいのか?」
ピートという名のレプラコーンは秋芳の問いかけには答えず、静かに姿を消した。
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