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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
ファリクス邸の怪 1
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ィー)が手に入ったので馳走する」
「馳走されようじゃないか」

 秋芳とセリカは書斎の塔から離れ、茶室へと移った。



「茶を挽くときは静かに油断なく滞らぬよう、茶道具はたびたび洗っておくよう、茶道具も人の心と同様汚れがつきやすい。茶の湯をひと杓汲み取った後は、水もひと杓差しくわえておくこと。けして使い捨て、飲み捨てにしないこと……」
「えいっ」
「うぼぁっ! ……なぜ寒さの残るこの時期に、沸いた湯にわざわざ水をひと杓差したのか」
「この時期は茶の香気が薄くなってくる、そんな茶に沸き立っている湯を入れたら茶の香気は吹き飛んでしまう。香気のない茶は美味くない。だから適当に熱さを加減したんだよ」
「ぬう、異形なれど見事なお点前」
「おまえの茶の淹れかたはまどろっこしいんだよ。あと、なんだこの部屋の狭さは。東方には茶道という独特の精神や思想があり、茶室が狭いのは理由があるのは知っているが、狭すぎだ」
「知っているなら文句を言うな」
「狭いのをいいことに私の匂いをくんかくんか嗅いで妙なことをするなよ、変態」
「たしかに良い匂いがするな。良き香りは魔を退けるというが、おまえからただよう芳香は麻薬のように甘く危険な香りがする。自然(じねん)の花の香のような甘く爽やかな香りのする京子とは似て非なるものだ」
「そうだ。私に近づくと身を滅ぼすぞ」
「ラーメンとアバンチュールには火傷がつきものだ」
「私はただのラーメンか」
「はて、この世界にもラーメンはあるのか?」
「ラーメンどころかハロウィンやノエルも公式に存在するからな。最近のおライトノベル読者はそんなこまかいことまで気にしないのさ」
「ステータスバーが出てきたり、なんちゃらスキルのひとことで諸々納得する孺子が相手の微温い商売になったものだなぁ。ファンタジーじゃがいも警察は今いずこ?」
「そんなことよりもおまえが『ファリクス邸の怪』をどうにかした話をしろ」
「ああ、僧侶や魔術師が幾度も祓魔を試みたと言うが、結論から言うとこの屋敷に憑いていたものは幽霊ではなかったんだ」
「ほう、ではなにが憑いていたんだ?」
「精霊だ――」





 錆の浮いた門の先には古色蒼然とした屋敷が悠然とそびえ立っていた。
 くすんだレンガの壁一面に蜘蛛の巣のように蔦が絡まり、門から玄関までの路は雑草で生い茂っており、かつては清水を湛えていただろう池はどす黒い泥水が溜まっている。

「なかなか侘びた風情のたたずまいじゃないか。この野趣あふれる庭も気に入った。少し手を入れれば良い菜園になりそうだ」
「それはようございました騎士爵様。どうぞごゆっくりご見分ください。では、わたくしはこれで……」

 フェジテ行政庁勤めの役人は秋芳に書類の束といくつかの鍵を渡してそそくさと立ち去ろ
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