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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
ファリクス邸の怪 1
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閑静な場所にあった。

「しかも中央から見て丑寅の方角とはね。陰陽師であるこの俺を鬼門に置くか。なんとも妙な縁を感じる。天は俺にこの街を守れと、安倍晴明になれと言っているのか」

 諸説あるが、平安時代の大陰陽師・安倍晴明は内裏の北東にあたる場所に屋敷を構えたとされている。
 晴明の強大な霊力で、鬼門封じをしたわけである。

「士は己を知る者の為に死す。こうまでされては俺も恩に報わなければな。もしも将来この街が災厄に見舞われるようなことがあれば、全力で守ろう」

 秋芳は相互主義者だ。良き待遇をしてもらったからには、こちらも同等の恩を返さなければと思う。

「ふ〜ん、あの埃まみれの幽霊屋敷がずいぶんと立派になったじゃないか」
「呼び鈴くらい鳴らせ、不法侵入者」

 いつの間に部屋に入ったのか、ひとりの女性が秋芳に声をかけた。
 黄金を溶かしたかのような豪奢な金髪の煌めきが西日を照り返し、輝いていた。
 美しいのは髪だけではない。
 雪花石膏(アラバスター)のような白磁の肌、紅玉(ルビー)のように煌めく瞳、珊瑚のように艶やかな朱唇、そこから奏でられるのは玉を転がすような美声――。
 美を司る女神でも降臨したかのように、その女性がそこに現れただけでなんの飾り気も変哲ない書斎が変貌した。
 セリカだ。
 《灰燼の魔女》、《惨劇の魔王》、《竜殺し》――。あまたの異名を持つ、人外の第七階梯(セプテンデ)であり、秋芳の担当講師であるセリカ=アルフォネアがそこにいた。

「土地や建物は広く大きく瑕疵がなく、立地も良いにも関わらずだれもが長居をしないという、由緒正しい化け物屋敷。フェジテ四大七不思議に数えられる『ファリクス邸の怪』を祓ったそうじゃないか」
「四大七不思議って、四つなのか七つなのか一一なのか二八なのか、いくつなんだ」
「つまりそれだけ多いってことさ、フェジテは歴史のある街だからね」

 フェジテはアルザーノ帝国魔術学院と共に発展した大陸有数の学究都市であり、学院の歴史は四〇〇年におよぶ。だがフェジテという街自体は学院創立以前から存在し、その歴史は古い。時代の変遷とともに何度も区画整理と上下水道整備を行ってきたため地図にも乗らない旧下水道が埋めきれずに残っている。

「エリサレスの僧侶や魔術師が幾度も祓魔(エクソシスム)しようと試みたものの、だれひとり成功しなかった『ファリクス邸の怪』を治めて、その屋敷に移り住んだと聞いて挨拶しに来てやったんだ。どうやって解決したんだ? 聞かせろよ」
「どれ、せっかく来たのだから茶でも淹れてやろう。茶室を新調したんだ」
「それじゃあお言葉に甘えて。そうだな、リフレスの特級熟撰茶葉を八分煎じで、カモミールをひと摘まみ合わせてくれ」
「ない。その代わり東方緑茶(グリーンテ
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