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彼願白書
逆さ磔の悪魔
ファーストインプレッション
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した。

「最近、南洋で暴れ回っている黒い空母がいるな?」

『あぁ、幸か不幸かこっちは被害がないがな。被害があればぶっ叩く必要があると思っていたが、もう沈められたらしいが?』

「今回、私の仕事はその空母をキッチリ仕留めることだ。既に5回も沈んだくせにしつこく蘇ってきてるらしいんでな。」

『なんじゃそら。新型の量産型なんじゃねえのかよ。その言い方だと、たった一体が何度も復活してるみたいな言い様じゃねぇか。』

「あぁ、認めがたいがそういうことだ。で、だ。電話の用件を単刀直入に言おう。囮になってくれ。」

『ほう……俺達に、囮をやれとは……言うじゃねぇか。』

「ブルネイの切り札、南方のビッグパパ、その男が率いる艦隊だからこそ、こうやって囮役を持ち掛けているのだ。そこらの艦隊であったなら、数だけ固めさせて適当に捨て石にしているさ。」

言い切ってから、壬生森はティーカップの紅茶を啜る。
しばしの間、無言の時間。

『そうしなかったのは、心境の変化かい?』

「なぜ、そう思う?」

『ジジィから昔、アンタの戦い方ってものを見せてもらったことがある。間違いなく、俺には出来ないことだったよ。』

「称賛、というわけではなさそうだね。」

『あぁ、今のご時世にこんな戦いをやる奴だったら、間違いなく俺が潰してる。』

見たのは大方、帝都防衛決戦の資料だろう。
だとしたら、金城の反応も納得だ。

『ただ、俺があの時に提督だったら、と思わない訳じゃねぇさ。その頃に比べたら、俺達はまだ恵まれてると思ってるよ。』

「そう言ってくれるなら、浮かばれるものもあるだろうな。」

そう言ったあと、壬生森はカップの中の紅茶の残りを音もなく飲み込む。
しばしの間、次の題や句を探す。

『アンタは、後悔してるのか?』

「二十年前のあの時に戻ったとしても、その更に四年前のあの時に戻ったとしても、私は迷いなく同じ選択肢を選ぶ。そう思う以上、今は後悔はないのだと思う。」

『後悔じゃなきゃなんだってんだ?禍根か?』

「ほんの少しの、自覚のある割り切られたハズのサバイバーズ・ギルトの半端な余り、だろうね。まぁ、そんなものでも年月をかけただけあって、少しだけ心持ちを変えるくらいのことはするらしくてね。囮を捨て石にすることを嫌悪するくらいには、私は日和見になったらしい。」

『いぃや。欲張りになったんだろ、昔より。アンタはもっと自分の欲しいものは欲しがっていくべきだぜ。今の俺がアンタのプランに乗ることで、アンタから何かしらの見返りを狙ってるようによ。』

壬生森は受話器を肩と耳で挟んで、タバコを懐の内から出して、咥えて、火を着ける。
最近、壬生森は拠点が地下から地上に変わったせいか、タバコの本数
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