逆さ磔の悪魔
ジャーニーホーム
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「踏み込み、飛び込み、どっちも足りねぇぞ。」
「はいっ!」
砂浜の真ん中に立つ天龍と、少し離れたところに立つ神風。
二人の手には木刀が握られており、神風は前に構え、天龍は木刀を持った手を下げた状態でいる。
神風が叫び、一足で二間を駆ける。
踏み抜けた足元からは砂は跳ねず、ぎちりと踏み固められた靴跡が残る。
がつりと音が鳴り、神風の一太刀は天龍の片手で振るった木刀に止められる。
しかし、神風の太刀筋はそこで止まらない。
すぐさま刃を返し、逆袈裟で振るいかかる。
それを同じように天龍は返す刀で止めて、競り合った状態で下に回すように下ろさせる。
神風はすぐさま片手で鍔迫り合いから引抜き、そしてそのまま片手で突きを繰り出す。
天龍は下から切り上げるようにその突きを払う。
弾かれた太刀筋でそのまま神風は背負うように構え直し、一気に振り下ろす。
だがそれは、天龍の太刀に外へ反らされ、砂浜を穿つ。
「たぁああああっ!」
そのまま神風は左足を振り、蹴り上げる。
「おっと。」
しかし、その爪先は天龍の脇腹まで届かず、天龍に空いてる手で蹴り足の甲を掴むように受け止められる。
「はい、今日はここまでだ。」
「きゃあっ!」
そのまま天龍は掴んだ蹴り足を持ち上げ、軸足を払って、神風を砂浜に引っくり返す。
「熊野、なんか用か?」
砂浜に入ってきた熊野のほうに、天龍は顔を向ける。
眼帯で隠れている左のほうの目なのに、まるで見透かされているような感覚。
熊野はもう何年どころではなく彼女と向き合ってきたハズなのに、この眼帯越しの視線を向けられている感覚には慣れない。
天龍の眼帯の下の目は見えてないハズなのに。
「用はそっちで砂浜に転がっている新入りにありますわ。」
熊野は気持ちを切り替えて、本来の用件を切り出す。
「だ、そうだ。神風。起きろー。」
「はっ、はいっ!」
ばっと砂浜で転がっていた状態から神風は飛び起きる。
隠そうとはしているが、息が上がっているのは肩でわかる。
「ステイ、ステイ。呼吸を調えてからでよろしいですわ。」
「はぁ、すみません……ふぅ……」
深呼吸を二度、三度、そしてようやっと息切れが収まったらしい。
「艤装のことで話があるので、明石のところに行ってもらいますわ。明石の工廠はわかりますわね?」
「はい、わかりました!」
一礼してからそそくさと走る神風を見送ったあと、熊野は天龍のほうを見る。
「嬉しそうですわね。」
「あぁ、楽しいな。弟子を持つ、ってこういう感覚なのかね、と思ったところさ。」
「剣術に向いているようでよかったですわね。」
「向いてる訳じゃねぇよ。」
天龍
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ