逆さ磔の悪魔
ジャーニーホーム
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私達のスタートラインこそがゴールテープなのよ。だから……」
だから……遠いんじゃない。
叢雲は拗ねたように提督の腕に擦り寄り、目を瞑る。
きっと、彼に聞こえている言葉だ。
それでも、聞かなかったことにするのが彼だ。
いつだって彼の選択肢は、きっと絶句するほど、残酷なのだから。
木曾はそんな残酷が過ぎる彼等を、ひたすらに哀れに見ているのかもしれない。
ただ、木曾は同時に思うのだ。
そんな彼等が、それでも全員が納得しうる未来を求めているのだ。
だから、結末くらいはきっと、マトモなものになることを祈ろう。
そのくらいのことはねだってもいいじゃないか、と木曾は思うのだ。
厄介な職場だぜ、と木曾は口に出さずにごちる。
中継地の宮古島はまだ、遠い。
「で、このふざけた改造はまぁ、トラックの明石がやったんでしょうけど、そこに更にふざけた改造をしようっての?」
工廠担当の次席である夕張は、プロジェクターで映し出されている設計図に呆れる。
「やるしかないでしょう?神風もそれでいいですね?」
「はい、お願いします!」
「いや、でもねぇ……明石、これ元々の時点でもなかなかアホな改造よ?神風、ホントにこんな艤装で海に出られたの?」
「はい、出ていました。」
夕張と明石の間に挟まれるような形になってるものの、神風の返事に濁りはない。
だからこそ、夕張は頭が痛くなるような感覚を覚える。
夕張はこの感覚が苦手だ。
なんでこんなに、揃いも揃って追い詰められたような顔で決断するのだろう。
なんでこんなに、追い詰めるような選択肢しか残されてないようなことを選ばせるのだろう。
夕張は理解が出来ない訳ではない。
ただ、納得が出来ないのだ。
技術者として、ユーザーの安全が確保されていないモノは失敗作だと思っている。
ユーザーにそんな失敗作、欠陥品を渡す時点で技術者の戦いは敗北なのだ。
そんなものを平気な顔で渡せる明石が何を思っているのか。
夕張はきっと、納得することはないだろう。
ただ、おそらく、自分が明石の立場なら同じことをするだろうとはわかっている。
「あのね、神風?明石の言ったこと、わかってる?操作の加減をミスったら爆発、被弾したら当たり所がよくない限り爆発、というか何をやらかしても爆発する挙げ句に性能はじゃじゃ馬で、どこにも褒めるところのないアホみたいなマシンに命を預けろ、って言ってるのよ!?」
「わかっています。そして、これはいずれ、誰かが辿る道でしょう。だったら、私が一番最初に歩きます。」
「……モルモットだって、もっとマシな扱いされるわ……こんなの。」
神風の意思は固い。
頑な、とも言える。
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