逆さ磔の悪魔
フォックス・ラッフィング
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
な胡散臭さを隠さない態度から、政敵からは蛇蝎のごとく嫌われていたり、そうでない者からも『狐野郎』と呼ばれたりしている男である。
「そうね。さっさと帰りましょ?どこにアンタの敵がいるかわかんないものね。」
「その言い方は引っ掛かるなぁ。私だけがやましいみたいじゃないか。」
「事実でしょ?アンタが私みたいな清廉潔白な身だとでも?」
白い少女は普段は着ない、紺色のレディース物のスーツにタイトスカートと革のローファーをその低い背丈を思わせないほどキチリと着こなしている。
彼女の名前は叢雲、壬生森の秘書艦として何十年とこうしてやや斜め後をずっと付いてきた、最古参の艦娘である。
「おいおい、私はこれでもだね……っと……」
壬生森はわざとらしい、弁解する気を更々感じさせない弁解をしようとして、官邸の玄関で口と足を止めた。
叢雲も、それに併せて壬生森の斜め前まで歩いてから足を止める。
彼等の前には、黒服にサングラスとソフト帽の男達が左右に横並びで待っており、その間にはその二人を率いてきたのであろう白髪混じりの初老ながら力強く鼻の高い顔付きの男が陣取っている。
「ほら、さっそく出てきたじゃない。アンタ、私の知らないとこで宇宙人でも見つけたの?」
「まさか。 トミー・リー・ジョーンズとウィル・スミスに追われるような覚えはないよ。 」
叢雲は呆れたように壬生森に問う。
壬生森がおどけたように肩を竦める。
「つまり、あれは……ただの壁、でいいわね?」
叢雲が左手を前に、右手を後ろに、そして右足を一歩前に。
そして、叢雲の左手の指先は真ん中にいるトミー・リー・ジョーンズをしっかりと指す。
「まぁ待て。壁を吹き飛ばすのに、その槍を用いるのは大袈裟が過ぎる。さて、そろそろ名乗るなり、抜くなり、なにかしたらどうかね?」
壬生森は呆れたように叢雲を止めると、トミー・リー・ジョーンズに反応を求める。
「ニライカナイフリートの壬生森だな?」
「そこからかい?如何にも、 内務省統合分析室室長兼海上保安庁尖閣諸島魚釣島ニライカナイ基地特殊警備本部『蒼 」
「肩書き込みの自己紹介はけっこう。私は国防総省国防長官付き太平洋方面分析室のニコラス・ロングだ。」
壬生森が名刺を出そうとしたのを、あっさりと制止される。
ニコラス・ロングを名乗る初老の者は、サムズアップした右手を上げて、肩越しに親指で、背後の出口のほうを指す。
「ハママツに行くのだろう?送っていこう。」
「お話はリムジンの中で、ってことかな?」
「お互いに忙しい身の上だろう。スケジュールに響かないようにするには、これが一番と判断した。来てもらえるかね?」
「……文句のない、パーフェクトな根回しだ。」
では
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ