514部分:最終話 空に星が輝く様にその二
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最終話 空に星が輝く様にその二
「絶対いけるって」
「そう、じゃあこの調子でいったら」
「来年はお姉と同じ学校ね」
そのことがだ。嬉しくて仕方がないといった顔だった。そしてその顔でだ。姉に対してさらにこんなことまで話してきたのだった。
「ただ制服はね」
「どの制服にするの?」
「今考えてるの」
にこにことしての返事だった。
「受かってからでいいかな」
「そう思うわ。受かってからじっくりとね」
「考えればいいよね。じゃあ今は」
「勉強ね」
「うん、頑張るわ」
こう姉に答えた。
「私もね」
「私もね。頑張るからね」
星華もだ。にこりとして妹に告げた。
「これからね」
「うん、明るく頑張ってね」
「そうするからね」
その笑顔にはもう曇りはなかった。星華にはもうそれはなかった。そしてその明るい顔でだ。そのデートに赴くのだった。
デートの待ち合わせ場所はだ、相手の提案でだ。駅前の本屋だった。
そこで立ち並ぶ本、椎名の影響で純文学のコーナーを見回っていた。そうしながら相手を待っていた。
その中でだ。彼女は一冊の文庫本を手に取った。それは。
堀辰雄だった。音楽を思わせる独特な文体、実際に音楽からヒントを得たその文体で有名な作家だ。その作家の本を手に取った。
そこでだ。こう声がしてきた。
「風立ちぬなんだ」
「あっ、来たのね」
「うん、待った?」
相手だった。すらりとした長身が彼女の左にあった。
その彼がだ。爽やかに、春を思わせる笑顔で彼女に声をかけてきたのだ。
「ひょっとして」
「ううん、今来たところよ」
事実だが、だ。社交儀礼に聞こえる言葉であった。
「今ね」
「そうなんだ」
「そうよ。それでだけれど」
「その本?」
「最近。友達の影響受けてね」
椎名のことだ。言いながら彼女のその顔を思い出す。無表情だが微かに笑っている、その顔を思い出しながら話をするのだった。
「それで読むようになったの」
「堀辰雄をね」
「この作家って凄いの?」
「文章が凄いらしいね」
彼はこう星華に答えた。
「聞いた話だとね」
「あっ、読んだことないの」
「小説は。推理系ばかりなんだ」
そちらが趣味だというのである。
「コナン=ドイルとかね」
「ホームズね」
「大好きだよ。子供の頃は少年探偵団のシリーズ読んでたし」
「あっ、二十面相の」
「そうなんだ。そういうのが好きなんだ」
「推理小説ね」
「最近のお勧めはあれかな」
ここでだ。彼は星華にこのシリーズを出してきた。
「エルキュール=ポワロね」
「クリスティだったわよね」
「それ読んでるんだ」
「映画とかで観たけれど」
「小説もいいよ。読んでみたらどうかな」
「そうね。一度ね」
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