帰還の後に
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のは、私とアロンソ中佐――それに、スレイヤー少将だけだろうが。誰も今回の判断を疑っているものはいない。結果が正しいかどうかはわからないけれど……それは」
「歴史が決める――ですか」
ヤンの言葉を奪い、アレスが口にすれば、ヤンは小さく目を丸くした。
どこかつまらなそうにパンをほお張れば、そうだねと口をとがらせていった。
+ + +
絢爛豪華な、それは部屋というよりも宮殿の一室といった様相だった。
重厚な扉と、金色に装飾されて彫り込まれた彫刻。
白を基調とした壁紙には、高価な絵画を思わせる風景が描かれていた。
部屋の隙間を埋めるように置かれた壺に、室内中央のソファ。
一つ一つの家具は、それだけで平民たちの年間給与が飛ぶことだろう。
その室内の中央に、二人の老人が向かい合うように座っていた。
一人はモノクル――単眼鏡を右目につけた老人。
対するのは、立派な顎髭を蓄えた老人であった。
どちらも深い年月を顔に残し、渋い顔を表情に張り付かせている。
帝国軍三長官――銀河帝国の軍事を司るシュタインホフ統帥本部総長とエーレンベルク軍務尚書の二人だ。
シュタインホフが苛立ったように、指先でわき机をノックする。
その音さえ不愉快そうに、エーレンベルクは眉を顰めた。
やがて、重厚な扉の開く音がして、待ちかねたように二人の老人が顔を向けた。
現れたのはもう一人の老人だ。
いや、正確には少なくとも二人の老人よりは若干の若さがある。
そう感じられるのは、一切曲がらぬ背筋と大柄な体格によるものだろうか。
宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥。
その役職に恥じぬ堂々たる態度をもって、二人の待つ室内に入って来た。
「遅いではないか」
「先ほどまで宇宙艦隊司令部にいたのです。報告のとりまとめにも時間がかかりました」
「報告か――新しい報告はあったのか。例えば、味方殺しが嘘であったとかな」
「残念ながら」
言い切ったミュッケンベルガーの言葉に、シュタインホフは鼻を鳴らした。
口元は皮肉気に歪んではいたが、ミュッケンベルガーが近づく間、それを我慢したようだ。
わき机に置かれたウィスキーで口を湿らせ、ミュッケンベルガーが席に着くのを待った。
「なにか飲むか」
「それを待つ時間もおしいでしょうから。用件からすませましょう」
「それもそうだな。全く頭の痛い話だ……味方殺しなど。リヒテンラーデ候が聞けば、これ幸いにと、軍の失態として予算をさげそうだ。また余計な説教を聞かねばならん」
「そればかりではない。少数とは言え、前線には有力な貴族の子弟もいたからな」
ため息混じりのシュタインホフの言葉に、答えたのはエーレンベルクだった。
そこにはイ
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