512部分:第四十話 それぞれの幸せその十一
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第四十話 それぞれの幸せその十一
「けれどもっとな」
「今よりも大きくなれるわよ」
「もっとって」
「人間の器の大きさには限りがないんだ」
「だからよ」
それでだというのである。我が子への話を続ける。
「どうやら御前は佐藤さんと付き合ってな」
「物凄くいいことになったわね」
「月美のことは確かに好きだけれど」
それでもだというのだ。陽太郎は実感が湧かないまま述べていく。
「けれど。付き合ってて人間って大きくなるかな」
「そこから学ぶことがあればな」
「大きくなれるのよ」
「そうなんだ。学べればなんだ」
そう言われるとだ。陽太郎も少しだけわかった。
それでだ。二人はまた話すのだった。
「付き合うことでも大きくなれるんだ」
「人間の付き合いってそうだからな」
「色々と勉強になるものでもあるのよ」
「あっ、そういえば」
それを言われるとだ。陽太郎はさらにわかった。
それでだ。それを言葉にも出して話した。
「椎名とか。狭山達と一緒にいて」
「勉強になるな」
「御友達と一緒にいたら」
「なるなあ。確かにそうなんだよな」
腕を組んでだ。考える顔で述べた。
「何か友達の行動とか言葉ってな」
「そうだろ。お父さんもそうだった」
「お母さんもよ」
二人もだというのだ。二人はここではその人生の経験から話した。
「人と付き合っていってな」
「色々と勉強になったのよ」
「だからなんだ」
「お兄ちゃん、もっと大きくなって」
また横から言ってきた陽子だった。
「もっともっとね」
「ああ、わかったよ」
陽太郎はその陽子にだ。笑顔で返すのだった。
「俺、もっと大きくなるよ」
「私もそうなるから」
「陽子もか」
「うん、大きくなるよ」
満面の笑顔でだ。こうも言う彼女だった。
「お日様みたいにね。大きくね」
「お日様?ああ、そうだよな」
妹の今の言葉にだ。陽太郎は笑顔になってだ。それでこう言ったのだった。
「俺だってそうだしな」
「私の名前ってお日様の名前よね」
「そうだよ。俺もな」
その陽という文字だ。まさにそれなのだった。
「お日様だからな」
「お日様って大きいよね」
「ああ、凄く大きいよ」
「それで暖かくて。皆を照らして」
「陽子はそういう人になりたいんだな」
「うん、そうなの」
兄の顔を見てだ。満面の笑みで答えたのだった。
「私そうなの」
「じゃあ俺も」
自分の名前を思い出してだ。そうしての言葉だった。
「なるよ。絶対にな」
「うん、なろうね」
二人でだ。満面の笑みでこう話した。そんな話をしていた。
その二人を見てだ。両親は笑顔になっていた。このうえなく優しく暖かい笑顔で子供達を見ていた。両親も幸せを感じていたのだ。
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