STAGE3:おやすみ、私はもうたくさん
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「はあ……」
シャワーから上がった島キャプテン・ラディ──本名アッシュ・グラディウスは自分の部屋まで戻ると大きなため息をついた。
ドアには彼女の名前、それに『勝手に開けたら撃つ』と書かれている。さらにドアを閉めるとツンデツンデの一部がドアノブのに引っ付いて鍵をかけ、外から開けられないようにする厳重っぷりである。
薄桃色のパジャマに着替え、柔らかいベッドに寝転ぶ。部屋の中にはメリープや白いロコンのぬいぐるみが置かれ、本棚には少女漫画が並んでいる。
今の彼女が腰にモンスターボールをつけていても、その中に入っているのがルカリオやハッサム、ツンデツンデだとは誰も思わないだろう。彼女自身、もう似合うとは思っていない。
今日のポケモンバトルで負けたことを思い出す。思えばルカリオが相手が交代したからといって『バレットパンチ』を止めるはずないのだ。あの時点で、特性を看破してしまうべきだったかと考える。
「でも、今日勝ったらあいつがクルルクに嫌味を言うかもしれないし……あーもー」
今日の指令を出した人の事を思い浮かべ、その人にもクルルクにもそれを心配する自分自身にもむしゃくしゃする。一連の心の波動をキャッチして、ボールの中からルカリオが出てきて頭を下げた。ハッサムやほかのポケモンたちも、心配そうに見ている。
「ううん、ルカリオやみんなのせいじゃないのよ。……ごめんね」
「ルゥ……」
「ルカリオにウソついても意味がないから正直に言うけど……あなたたちの事は大好きよ。でもメレメレライダー、なんて男の子向けの変身ヒーローみたいな名乗りとしゃべり方でいるのはちょっと疲れるな、って思っちゃっただけ」
島キャプテンメレメレライダーの立場をもらった時はそうじゃなかった。実の母を物心つく前に亡くした昔の自分は、義理の姉と母親にいじめられて女らしいことをするのが嫌いで。ヒーローとしてかっこよく振る舞えるのが何より楽しかった。
意地悪な家族から離れて、この家でクルルクが温かいご飯を作ってくれたり、何かと気にかけてくれると嬉しい気持ちになった。
でも、一年前くらいからかわいい服を選んだりすると楽しいと思うようになった。昔は着飾った姉たちが大嫌いだったのに。
子供たちの声援を受けるのは嬉しいけど、男の子っぽい声を作って自分を偽るのが苦しくなってきた。自分が女という正体を知ってて声をかけてくる大人が気持ち悪いと思うようにもなった。
クルルクが自分を子ども扱いしたり妹のように扱うと、ちょっとイラっとくるようになってしまった。別に邪険にしてくるわけでもないし、嫌だといったことはやめてくれるのに。
「……ねえ、みんなは今日のバトルどうすれば勝てたと思う?」
この
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