第一章 護れなかった少年
第三十六話 選択(後編)
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唯々流れ出る物を堪えることは出来なかった。だから、僕は、せめて、たった一言だけ届けよう。
「圭介ッ!!!!」
涙でぐしゃぐしゃになった顔を必死に歪めて口角を上げる。たった、たった一言だけ。伝えたいことは山ほどある。それでも、もう時間も無いから。ほんの少しの言葉に、今までの全てへの感謝を込めて。
「ありがとうッッッッ!!」
絶叫のように放たれた感謝の言葉は彼に届いただろうか。きっと届いた。欠片に成り行く彼の姿を決して逃さまいと眼をしっかりと開いて、涙で歪む視界もそのままにその光景だけを見続ける。
やがて全ての欠片が消える頃には、白浜 圭介という人間はこの世から消えていた。
悲しみはあるけれど、それでも前を向けとヒーローは教えてくれた。生きろと言ってくれた。決して、決してそれは安っぽい自己犠牲なんかじゃなかった。独善的ではあったのかもしれない。偽善ではあったのかもしれない。それでも、彼は貫き通し、そして死んでいった。
だからこそ少年は希望を復活させることが出来た。だからこそ少女には呪いが残った。だからこそ狂人は最後に賞賛した。
感じることは三者三様。希望は芽吹き、呪いは重くのしかかる。芽吹いた希望は枯れるか咲誇るか。呪いは果たして周りを巻き込むのか唯々一人だけを呪い続けるのか。
最後に、狂人は嗤う。狂人故に嗤う。ショーの終幕は大団円だ。
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