第一章 護れなかった少年
第三十六話 選択(後編)
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れを是とするならば......そう思う。
でも、と思う。奥歯がギリッと音を立て、拳に力が入る。
(でも、その道は......。その道は、違うんだ)
自分が死ぬ覚悟で周りを助けようとする真のヒーローは、その道を是としなかった。生きろ、そう投げかけてきた。僕は。それに答えなかったら、今度こそ、本当に、もう只の人殺しにしかなれない......!!
だから僕は選択をする。最後の最後に、全てを与えてくれた親友に報いるために。大事な仲間を救うために。例え彼女に恨まれても、それでもいい。彼女が生きてさえ居てくれれば。彼女が生きてさえ居てくれればそれでいい。それだけで僕は戦える。それだけで僕は、全力を尽くす理由が出来る。
(だから、だから僕は......。そのために)
「1」
Pohが楽しそうにカウントしている。さぁどうする。もう覚悟は決まったのだろう? そう投げかけてくるその目を真っ直ぐ見て僕は――
「ケイだ」
「!?」
「ケイ? はてさてどっちだ? それにそれだけじゃよく分からないぞソラ。ちゃんと殺すか生かすか言ってくれないと」
メイの信じられない物を見る目を僕はしっかりと一度見る。そして直ぐPohに向かい合う。
「男の方だ。男の方を――殺してくれ」
「ソラ!! あなた――むぐっ」
「黙、れ。女」
選択を見届けたかのように、ザザはメイの口に再度猿轡を噛ませる。
「は、は.......ははは、ハハハハハハハハハハ!! そうか!! そうかそうか!! 男の方を殺すか!! はてさて、原因は何だったのやら、痴情の縺れって奴か!? ハハハハハハハ!! それとも、さっきの自己犠牲の安っぽいヒーローのような台詞が決め手か!? ハハハハハ!! そうだとしたら最ッ高にcoolだ!! 面白い面白い!! 実にいい美談!! ここまでやった甲斐があったというものだ!!」
Pohは狂ったように笑いながら宣い続ける。それに対して僕は何も言わない。言ったところで全て無意味なのだから。
たっぷり十数秒笑い続け、Pohは自分の獲物である、友切り包丁を抜いた。
「Well done. 素晴らしい決断だ。自分の手を汚せとは言わない。そこで、見ているがいい。自分の選択の末路を」
「......」
その言葉に無言を貫く。悔しいが、出来ることは無い。僕には、自分の手を汚すことすら、最早出来ない。
くぐもった絶叫をバックミュージックにPohは唯々歩いて行く。ケイの前に立った。友切り包丁を振りかぶった。ケイは唯々こっちを見て笑っていた。その顔はお礼を言っているみたいで。ありがとうと言っているみたいで。
(お礼を言うのはこっちなんだよ馬鹿野郎......!!)
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