第一章 護れなかった少年
第三十六話 選択(後編)
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ぁぁぁぁああああああああああ!!」
うなり声が様相を叫びへと変えていく。発狂してもおかしくないような非情な選択。精神は現界を迎え、眼球は忙しなく左右へぶれる。最早視界はまともなものでは無く、ブレる世界の中で悪魔だけが唯々笑っている。耳を塞ぎ、外界をシャットアウトする。
それでも、悪魔の笑い声が止まない。止んでくれない。哄笑が響き渡り、何度も何度も二人の命は奪われていく。僕の判断が遅いせいで。僕が判断出来ないせいで。何度も何度も。ダガーとエストックが二人の命を奪っていく。哄笑が止まない。狂笑が止まない。慟哭が止まない。違う。慟哭しているのは自分だ。鼻水と涙を唯々垂れ流し、自分が殺されるのを待つ。だけどその瞬間は何時までも訪れない。何度も何度も二人が死んでいく世界で、獲物は段々それぞれの武器からちっぽけなナイフに変わっていく。ただただ三人の命が奪われていく。僕はそれを見ていることしか出来ない。刺されたところから紅い染みが広がって、最後には結晶のように砕け散っていく。
最早世界すら混ざり合い、現実と現実が混ざり合う。
そんな狂気の中ですら、一筋の光は射す。朱と黒に塗りつぶされた世界、狂笑と慟哭で何も聞こえないはずの耳に、よく聞き覚えのある声が響いた。
「ソラッ!!!!」
「......ケ......イ......」
「4」
ケイに呼ばれた。世界は元に戻り狂笑も慟哭も鳴り止み、朱と黒は退いていく。ちっぽけなナイフは消え去り、三人は二人に戻る。
「 !! 、 !!」
ケイの力強い声が響いた。
「......え?」
「3」
お前はどうする? 再度言外にそう訪ねられた気がした。
ケイは......ただ笑って僕を見ていた。狂笑や哄笑じゃ無い。あの頃の、僕を助けてくれた時のままの顔で。本当に穏やかで。本当に暖かくて。僕らが慕った圭介がそこに居た。
「圭介......」
メイは恐らくケイの本名を口にしていることすら気付いていないだろう。それほどに動揺し、そして、
「何を......何を言っているの!? いや!! そんなのはいや!! もう誰も欠けて欲しくない!! どうせなら、このまま三人で......」
「2」
メイはそう言って下を向いて口を噤んだ。その先は口に出せなかったのだろう。だが直ぐに顔を上げて此方を見てくる。ソラはわかってくれるよね。このまま私たち三人で......。そんな答えを向けてくる。
確かにそれは甘美な誘いだ。僕なんてどうせ、この世界から戻っても行く当てもやることも、希望も何も無い。だったら、このまま大事な仲間二人と......。そう思う。思わないようにしてたけど、それでも、メイがそ
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