巻ノ百五十一 決していく戦その六
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「それじゃあね」
「仕掛けることはないな」
「ない、ではな」
「わしの首を取らずに」
「殿をお迎えに行く、さらばじゃ」
「負けたからね、行くといいよ」
道化も笑って告げた。そうしてだった。
由利が行くに任せた、由利もまた主の下に向かった。
海野は音精の次から次に繰り出す音の攻撃をかわしそうしつつ己の水の術を使っていた。水は何処からも出して放っているが。
その中でだ、彼は言った。
「ううむ、これはな」
「これは?」
「そろそろか」
「秘術の出すのかしら」
「その時が来たと思ったがな」
「奇遇ね、それは私もよ」
音精は今の海野の言葉に笑みで応えた。
「もうね」
「お主もか」
「秘術を出そうと思っていたわ」
まさにその時だったというのだ。
「だからね」
「ここでは」
「私の最後の術、最高の秘術を出すわ」
「ならばわしもじゃ」
海野も強い声を返した。
「ならばじゃ」
「どちらの秘術が上か勝負ね」
「わしはここで勝って殿をお迎えせねばならん」
彼のところに行かねばならないというのだ。
「だからな」
「私に勝つというのね」
「必ずな、ではな」
「ここでね」
「決着をつけよう」
「望むところよ」
音精は横笛をあらためて手にした、そうして。
海野は印を結んだ、音精が笛を奏でると。
何か音にならない音がした、海野はその音を感じ取って言った。
「この音は」
「音は不思議なものよ、これは人には聴こえないけれど」
「それでもか」
「そうよ、それは確かにあって」
音、それはというのだ。
「その衝撃で全てを壊すのよ」
「そうしたものか」
「そうよ、私が壊そうと思った全てのものを壊す」
今音精が奏でているその音はというのだ。
「音が奏でられている場所の中にあるね」
「それは凄い秘術だな」
海野が聞いても思うことだった、それも正直に。
「そんな術を使われるとな」
「例え真田十勇士でもね」
「倒せるか」
「そうよ、この術には勝てるかしら」
「その自信はある」
これが海野の返事だった。
「だからここにいる」
「そう言うのね」
「わしもここで秘術を使う」
まさにという返事だった。
「先程言った通りにな」
「それじゃあ」
「今その秘術を出そう」
印はまだ結んでいる、そしてその印を結んでいる海野の周りからだった。まずは。
水が起こった、その水は忽ちのうちに辺り一面を流し尽くす様な激流となり海野の周りを洗った。すると。
音精の聴こえず見えもしない音がだった。
潰された、そうしてその潰されなかった流れが音精に向かってきた。音精はその流れを跳んでかわしたが。
流れが終わってからだ、音精は唸って言った。
「まさか激流を起こすとは
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