巻ノ百五十一 決していく戦その五
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それでだ、こう言ったのだった。
「この穴は」
「普通の穴じゃなくてな」
「全てを吸い込みか」
「決して出さぬ穴」
そうした穴だというのだ。
「わしの最高の秘術よ」
「恐ろしい穴を出したな」
「それだけに滅多に出さないんだよ」
術を使う道化にしてもというのだ。
「危ないですからな」
「しかしそれでもか」
「あんたには出したよ」
「見ての通りだな」
「如何にも、あんたならな」
由利、彼ならというのだ。
「これを使うしかないと思って出したんだ」
「ほう、わしを倒すにはか」
「この秘術しかない、さてこの穴はそれこそ何でも吸い込むが」
「わしはそれをどう防ぐか」
「それでわしに勝てるかい?」
「今こうしておるだけでもその穴に吸い込まれてしまいそうだ」
周りの石や草がどんどん吸い込まれている、それは風がその穴に無理に押し込んでいる様だった。それは由利も同じで。
少しでも油断すると穴の中に吸い込まれてしまいそうだ、今は踏ん張っているがそれでもだった。
だが由利の顔には余裕があった、その余裕を以て道化に告げた。
「ではわしもな」
「秘術を出すんだね」
「うむ、そしてその秘術でじゃ」
まさにというのだ。
「お主のその秘術を破ってみせよう」
「わしの秘術はもうこれでないよ」
「それでじゃな」
「この秘術を破られたら負けだよ」
もう他に手がないというのだ。
「だからね」
「それでじゃな」
「由利殿のその秘術が穴を潰せば」
その時こそというのだ。
「終わりだよ」
「そうか、それではな」
「破るんだね」
「そうさせてもらう、ではじゃ」
まさにとだ、由利は道化に応えてだった。
その鎖鎌の鎌のところに渾身の気を込めた、そうしてだった。
上から下に鎌を一閃させた、その一閃を幾度も幾度も繰り返した。すると。
一閃ごとに竜巻、大きさは小さいが凄まじい速さと衝撃力を以て穴に向かった。竜巻達は穴に次々にぶつかり。
最初は何もなかったが遂にだった、穴にきしむが生じ。
やがて穴も遂に壊れ鏡の様に粉々に砕け散った、これで何もかも吸い込む穴はなくなった。
それを見てだ、道化は唸って言った。
「竜巻に気を込めて放つと」
「只の風だけでなくな」
「この上ない強さになってそうして」
「穴もだね」
「この通りじゃ」
まさにというのだ。
「壊れる、何度も撃って壊れぬものはない。この気を込めた竜巻は金剛石すらも砕けるのだからな」
「あの金剛石を」
「それを何度もぶつけた、ならばじゃ」
「穴も壊れるんだね」
「左様、これでわしの勝ちじゃな」
「やられたよ、じゃあわしの首はね」
「そんなものはいらん」
由利は道化に即座にこう返した。
「わしは勝った、ならば
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