第二章
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「そしてこの草原にも来て」
「多くの者を襲うかも知れないか」
「そうなるのでは」
「例えそうなっても大蛇を倒せはしない」
「誰もですか」
「大蛇はあまりにも強いのだからな」
それ故にというのだ。
「倒せる筈がない」
「しかし」
「しかしもない、どうしようもない相手だ」
あくまで言う父だった、だがアルティンはその話を聞いて思い立った。
そしてだ、自ら馬に乗り北の森に行ってだった。
大蛇を探した、その手には剣がありそれで大蛇を倒すつもりだった。そしてその大蛇を見付けるとだった。
途方もない大きさの大蛇が森の湖を囲む様にして寝ていた、大きさは人間にして何百人分もありそうだった。その口も。
人間が入られる位に大きかった、それでアルティンは意を決してだった。
馬に乗ったまま大蛇の口の中に入った、大蛇の鱗は鉄よりも硬そうだったが身体の中身は柔らかいだろうと思ってそこから攻めようと思ったのだ。
大蛇の口の中は馬に乗っても普通に通られるまで広く大きかった、その中を進んでいくとやがてだった。
思わぬまでに広い場所に出た、そこでは多くの馬や羊達がいてゲルも幾つかある。そして多くの人々がいたが。
彼等はアルティンの姿を見てこう言った。
「また食われたか」
「食われた奴が来たか」
「新入りになるな」
「そうだな」
「新入り?貴方達は」
アルティンは彼等の言葉を聞いて怪訝な顔になり言った。
「まさかと思うが」
「ああ、大蛇に食われてな」
「それからずっとここにいるんだ」
そうだというのだ。
「大蛇の腹の中にな」
「こうしてな」
「そうか、これだけの者達が食われていたか」
一つの部族位もある、女も結構いる。
「大蛇に」
「そうだったのだ」
「そして我々は今はここで暮らしている」
「食われたが生きてはいる」
「今もな」
「そのことはわかった、では大蛇を倒すとだ」
どうなるかとだ、アルティンは蛇に食われた者達に言った。
「そなた達は外に出られるな」
「そうなるだろう」
「大蛇さえ倒せばな」
「我々はまだ生きているのだからな」
「そうなる筈だ」
「そうだな、ではだ」
それならとだ、アルティンは意を決した顔で言った。
「ここは大蛇を倒そう」
「そうするのか」
「その覚悟はいいが」
「しかしだ」
「あの大蛇は倒せないぞ」
「何を言う、この世に決して倒せぬ存在なぞいない」
アルティンは自分の言葉にどうかと返した者達に毅然として答えた。その仲には大蛇を倒そうとして逆に食われた英雄も多い。
「何があろうともな、それこそ心臓を切ればだ」
「それでだな」
「如何なる者も死ぬ」
「そうだというのだな」
「羊も心臓を握れば死ぬ」
遊牧民の羊の殺し方だ、胸を割い
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