第五章
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「間もなくです」
「太郎殿がか」
「はい、挨拶もせずいきなりで申し訳ありませぬが」
こう義経達に言うのだった。
「既にです」
「軍勢を動かそうとしておるか」
「あと少しでここに軍勢が来ます」
泰衡が率いる彼等がというのだ。
「ですから」
「今のうちにか」
「逃げられる用意を」
「逃げるといって何処に逃げる」
義経は自分に落ち延びることを勧める西行にこのことを問うた。
「一体」
「蝦夷です」
西行は一言で答えた。
「このみちのくより北の」
「あの地にか」
「ここに軍勢が間もなく来ますので」
「戦になればか」
「はい、戦の騒ぎの中で」
「逃げよというのだな」
「蝦夷まで。もう道は頭に入れておりまする」
西行は義経にこのことも話した。
「ですから」
「あの地に落ち延びてか」
「あの地は本朝ではありませぬので」
「兄上も太郎殿もか」
「手出し出来ませぬ、あそこは広いですし若し人が来ても」
頼朝達がそうしてもというのだ。
「わかりませぬので」
「だからか」
「あの地に」
「お主を信じてだな」
「そうして頂きたいです」
西行はここで必死の顔になった、義経の武名を聞いていて彼と話していてその心を知った。そして自分を信じてくれたからだ。
だからこそだ、西行は義経に言うのだった。
「是非共」
「信じているのならか、お主を」
「そうして頂けますか」
西行はまた義経に言った、するとだった。
暫し沈黙し考える顔になってからだ、義経ははっきりとした顔になり西行に答えた。
「わかった、ではな」
「はい、それでは」
「お主を信じよう」
これが義経の返事だった。
「そしてだ」
「戦になれば」
「蝦夷まで逃れよう、皆と共にな」
「それでは」
「その時は蝦夷までの道案内を頼む」
西行にこうも告げた。
「宜しくな」
「さすれば」
西行は義経の言葉に確かな笑顔で応えた、そしてだった。
彼は泰衡の軍勢が衣川に押し寄せた時に戦の中で義経主従と彼等の家族を案内してまずは衣川から逃げさせた、逃れる時の戦と義経達が切腹したと見せかける為に館に火を点けたりしそれで敵の目を眩ませることで時がかかりその中で死んだ者達もいたが彼等の多く当然ながら義経も逃げることが出来た。その中には弁慶もいた。
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