第二章
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「誰であろうと」
「そうした方なので」
「奥州の藤原氏もです」
「滅ぼされますな」
「そして九郎殿も。ですから」
「早いうちにですか」
「陸奥守殿がご健在のうちに」
まさに今のうちにというのだ。
「みちのくを出られるべきです」
「先程北にも逃れられると言われましたが」
武士はここで西行に問うた。
「それは一体」
「はい、蝦夷です」
「みちのくの北にあると聞いていますが」
「あそこに逃れられれば」
その時はとだ、西行は武士に話した。
「本朝ではないので」
「流石に鎌倉殿も」
「敵は執拗に全て殺そうとされるあの方でも」
頼朝が身内でも情をかけずそうする男でもというのだ。
「それでもです」
「手出しはですな」
「出来ませぬ」
その頼朝でもというのだ。
「流石に」
「では」
「はい、何とかです」
今のうちにとだ、西行はまた武士に話した。
「蝦夷に去られるべきです」
「そうすべきですか」
「拙僧はこれよりです」
すぐにとだ、西行は武士にこのことも話した。
「行って参ります」
「左様ですか」
「はい、では」
「行先は聞きませぬ」
わかっているからだ、武士はあえてそうした。最早彼が何処に行くのかは言わずもがなだからである。
「それでは」
「お暇させて頂きます」
「道中お気をつけて」
武士は西行に密かに銭や干し飯を渡してだ、彼を送った。そうして西行は播磨から密かに東国に向かい。
みちのくに入った、そうしてそこからは人々の噂を聞いて義経がいるところを目指した。そこは衣川にあった。
衣川に館があった、その館の前に来るとすぐにだった、一人の極めて大柄な僧兵が薙刀を手に出て来た。
「旅のご坊をお見受けしますが」
「西行と申します」
西行はその僧兵に名乗った。
「ご存知でしょうか」
「西行殿ですか」
「はい」
西行は僧兵にその通りだと答えた。
「拙僧は」
「あの名高い」
「名高いかとうかは知りませぬが」
それでもと言うのだった。
「拙僧は西行です」
「左様ですか、では何用で」
「武蔵坊弁慶殿ですな」
西行は己よりも頭二つ大きく体格も山の様なその僧兵に問うた、見れば西行も決して小さくなくしっかりとした体格だが僧兵の体格は別格だった。
「そのお身体とここにおられることからお見受けしましたが」
「その通りです」
僧兵、弁慶は西行にその通りだと答えた。
「拙僧は武蔵坊弁慶です」
「やはりそうでしたか」
「はい、そしてこの度は」
「九郎判官殿にお会いしたいのですが」
「殿にですか」
「はい、宜しいでしょうか」
「一体西行殿が我が殿に」
「危急ではありませぬが今のうちにされた方がよいことです」
深刻な顔でだ、西行は弁慶に話した
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