第三章
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「それでもだよ」
「具体的にどうして出せばよね」
「それが問題だよ」
「今年の台風と海の荒れは今年だけのことなの」
「来年からは元に戻るんだ」
「そう、だから今年を乗り切ればいいから」
「そのこともわかったけれど」
「ええ、だから今年困らない分だけを出すものを用意するわ」
天女はアナ=イルに穏やかな笑みで話した。
「そうするわね」
「そうなんだ、じゃあ何を用意してくれるのかな」
「これよ」
こう言ってだ、天女はアナ=イルに早速二つのものを差し出した。それは白く塗られた籠と青く塗られた籠の二つだった。
その二つの籠を出してだ、天女はアナ=イルに話した。
「白い籠からはお米が幾らでも出るの」
「お米がだね」
「そう、お米はこれで困らないわ」
「そのお米を部族の皆に配ればね」
「そうよ、皆お米をお腹一杯食べられるわ」
そうなるとだ、天女はアナ=イルににこりと笑って話した。
「そうなるわ」
「そうなるんだね」
「そして青い籠はね」
天女は今度はこちらの籠の話をした。
「新鮮な生きたままのお魚が幾らでも出るの」
「そちらはお魚がだね」
「そう、出るの」
幾らでもというのだ。
「それこそね、どっちも逆さにするとね」
「籠をだね」
「その口から出て来るから」
米や魚、そうしたものがというのだ。
「これで部族の人達を助けられるわ」
「わかったよ、それじゃあすぐにね」
「お米やお魚を出して」
「それで皆を助けるよ」
アナ=イルは天女に答えた、そうしてだった。
実際に二つの籠で部族の皆を助けた、皆彼に深く感謝した。
だがここでもう一つ問題が起こった、島にとてつもなく巨大で力の強い虎が姿を現わしたのだ。虎は森を牛耳りそこに入る人を誰であろうが襲った。
島の者達は森に入ることが出来なくなりそこにいる獣を獲ることもそこに実る果物を採ることも出来なくなった。このことに誰もが困った。
それでアナ=イルは今度は虎を退治し島の困っている人達を助けようとした。だがこの時にまただった。
天女がアナ=イルにあるものを授けた。それは珊瑚の指輪だった。
「この指輪は」
「どんな攻撃も防いでくれるの」
天女はアナ=イルにその指輪のことを話した。
「あらゆるね」
「それじゃあ虎の攻撃も」
「ええ、防いでくれるわ」
こうアナ=イルに話した。
「爪や牙、体当たりもね」
「それじゃあ僕は」
「ええ、虎を倒せるわ」
その巨大で力の強い虎をというのだ。
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