第五章
[8]前話
「家中で暴れる不良娘じゃない」
「おい、御前さん不良らしいぞ」
雄作は孫娘の言葉を受けて寝かけているミミにこう言った。
「そうらしいぞ」
「ミミ自身に言っても仕方ないでしょ」
「それもそうか」
「そうよ、言ってあらためる猫じゃないし」
「猫は人の言葉わかるらしいけれどな」
「人の言葉がわかってもよ」
それでもというのだ。
「この子はそれで聞く娘じゃないでしょ、実際かなり躾て怒ってね」
「やっとか」
「ましになった娘だから」
そうした娘だからというのだ。
「やれやれよ」
「そうか、しかしな」
「しかし?」
「皆退屈はしてないだろ」
雄作は聡美に笑って言った。
「そうだろ」
「退屈ね」
「ああ、それでもの足りないものはあるか?」
「そう言われると」
どうもとだ、聡美は祖父に答えた。隣の部屋では祖母が母と一緒にテレビを観ていて父は庭でゴルフの素振りをしている。兄は恋人とデートに行っている。そろそろ結婚らしく聡美にも彼女の彼氏とそろそろと言っている。
そうしたのどかな日常の中でだ、聡美は祖父に答えた。
「別に」
「そうだろ、じゃあいいだろ」
「ミミはこのままで」
「別にな」
「そうなのね」
「ああ、少なくともわしはこれでいいぞ」
ミミは今のミミでというのだ。
「猫を飼いたかったしな、昔から」
「じゃあよく来てくれたっていうの」
「そうだ」
その通りという返事だった。
「本当にな」
「そうなのね」
「ミミが来てくれて本当によかった」
「ガサツで乱暴な娘でも」
「本当によかったと思ってるさ、だからこれからもな」
「ミミと一緒にいたいのね」
「ずっとな」
こう言ってだ、そしてだった。
雄作はミミの頭を撫でた、この時にはもうミミは彼の膝の上で気持ちよさそうに目を閉じて眠りに入っていた。
ミミはその後成猫になってから不妊手術を受けた、それで多少は大人しくなった。しかし聡美が言うガサツで乱暴な気質はそのままで家族に笑顔で言われ続けた。そうして猫としての一生を楽しく過ごした。
最初は大人しい 完
2018・3・15
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