第二章
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「毛並みも随分と悪いし」
「そうだな」
「大体三ヶ月か四ヶ月位?」
聡美は今度はミミの歳について推察した、鼻の下の右半分は白く胸も腹もだ。サビ猫だがそうしたところは白い。
「この娘」
「病院に連れて行ったらそう言われたよ」
「そうなの、やっぱり」
「ああ、けれど御飯もちゃんと食べるしトイレもな」
「ちゃんと猫のトイレでするしね」
「手もかからないしな」
何故野良猫なのに家の中で猫のトイレで用を足せるのか、聡美はこのことが気になったがそれでもだった。
手がかからないならそれでいい、それで言うのだった。
「それはそうね」
「そうだろ、じゃあな」
「ミミはこのままなのね」
「家で飼っていこうな」
「家族は皆そう言ってるしね」
「器量は今一つだけれどな」
雄作はミミの顔についてはこう言うが聡美もこう思っている、そして他の家族の面々も実は同じ様に思っている。
「それでもな」
「折角お家に来たから」
「大事にしていこうな」
「ええ、大人しいみたいだしね」
聡美は祖父の膝の上で寝ているミミを見てこうも言った、実際にミミは祖父の膝の上で大人しく寝ていた。だが。
聡美はこの大人しいという言葉をすぐに否定することになった、家に来て暫く経つと。
ミミは家の中を駆け回る様になった、そして家族が自分の近くを通るとすぐに足を出して引っ掻く様になった。それは家族の傍や膝の上で寝ていても気が向けばだ。
そうする様になってきた、それで母の由美子が言った。見れば聡美がそのまま歳を経た様な顔になっている。
「またミミに引っ掻かれたわ」
「また?」
「そう、またよ」
母は顔を顰めさせて娘に答えた。
「膝の上にいたらね」
「いきなりなの」
「そう、何が気に入らないのか」
「急に引っ掻いてきたの」
「いつも通りね」
「そうだったのね」
「全く、いきなりそうしてくるから」
その顰めさせた顔での言葉だった。
「それもいつもだし」
「悪い娘よね、ミミって」
「本当にね、いつもいきなりだから」
「引っ掻いたり噛んだりね」
「動き一つ一つが乱暴で」
「ガサツなのよ」
母娘でミミについて話すがミミ自身は今しがた引っ掻いた人間の横でくつろいで欠伸さえしている。
「どうもね」
「そうよね、お祖父ちゃんが拾って来た時は大人しかったのに」
「それがね」
「物凄く乱暴で。女の子なのに」
「猫は女の子の方が乱暴なのよ」
ここでこう言った母だった。
「これがね」
「あれっ、そうなの」
「そうよ、猫は女の子の方がそうなの」
乱暴だというのだ。
「これがね」
「そうだったのね」
「それでもこの娘はかなりね」
「乱暴な方なのね」
「そう思うわ、これは困った娘よ」
ミミはというのだ。
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