第一章
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最初は大人しい
ミミが来たのは遠山聡美にとっては急だった、仕事から家に帰ると定年してかなり経っている祖父の膝の上にサビ猫がいた。
そのサビ猫、まだかなり小さい子猫としか思えないその猫を観て祖父の雄作に尋ねた。
「その猫何?」
「散歩中に拾ったんだよ」
雄作は子猫を撫でつつ聡美に答えた。
「前から歩いてきてな」
「それでなの」
「ああ、そこからわしについて来たからな」
「家になのね」
「入れたんだよ」
そうしたというのだ。
「婆さんにも言ったがうちで飼わないか?」
「お祖母ちゃんは何て言ったの」
聡美は雄作に少し怪訝な顔になって問うた。
「それで」
「いいって言ったよ」
「飼っていいって」
「そう、言ってくれたよ」
「じゃあすぐに御飯とかおトイレ用意しないと」
「ああ、もうペットショップまで車で行って買ってきた」
猫に必要なものはというのだ。
「トイレのシートや砂もな」
「じゃあもう飼うつもりなの」
「これからな」
「そうするのね、しかし」
聡美はその猫を見た、じっと自分を見ているその猫ははっきりとした目を持っていて何よりも耳が大きい。野良猫だったのか痩せていて毛並みはかなり悪い。
「あまりね」
「可愛くないか?」
「そう思ったけれど」
「そうか?けれどな」
「お祖父ちゃんは気に入ったの」
「ああ、わしについて来たからな」
それでというのだ。
「気に入ってるんだけれどな」
「そうなのね」
「わしが世話をする、もう定年して暇だったしな」
「そうなの、お父さんもお母さんもお兄ちゃんも」
「別に世話をしなくていいからな」
家族の者達はとだ、雄作は聡美に笑って話した。
「本当にな」
「それじゃあ」
「ああ、後は名前も考えてな」
「首輪も付けてなのね」
飼い猫の証であるそれをというのだ。
「飼ってくのね」
「うちでな、家猫にするからな」
「お家から出さないの」
「ああ、それでも十分な縄張りの広さだし外だと車とかワルガキとかいるからな」
危険があるからだというのだ。
「もうな」
「お家の中で飼うのね」
「そうするな」
こうしてだった、ミミは遠山家の猫となった。名前は家に入れて数日後に雄作が付けた。そうしてだった。
ミミは遠山家での生活をはじめたが、聡美はそのミミを見て思った。
「何か随分と慣れてるわね」
「人間にな」
「ええ、妙にね」
こう雄作に言うのだった、彼の膝の上で丸くなっているミミ自身を見て。
「野良猫だったのに」
「野良猫でもいつも人と接していたんだろ」
「そうなの」
「スーパーの近くにいたしな」
「あそこで御飯貰ってたのかしら」
「そうだろうな、けれど野良猫だからな」
「
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