第一章
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国民
新聞部の市川歩と須田大貴はこの時クラスで悩んでいた、二人共同じクラスなので相談するのに移動の必要があまりないのは幸いだった。
歩は高校に入ってから急に背が伸びて今は一七六ある、落ち着いた顔立ちで黒い目が大きい。髪の毛は黒く真ん中で分けている。その顔で大貴に言った。
「今度の記事だけれど」
「どうしても空くんだよな、記事一個」
大貴はニキビの跡が目立つ顔で歩に応えた、背は一七〇位で黒髪を短くしている。二人共黒い詰襟の制服を真面目に着ている。
「どうにも」
「校内の話ばかりでね」
「最近うちの学校平和だしな」
「騒ぐことないしね」
「しかもいいこともな」
大貴はこちらの話もした。
「そっちもな」
「ないんだよね」
「ああ、よくも悪くもな」
大貴は自分の椅子から歩に言った、自分の席の椅子を歩の席まで持って来てそのうえで話をしているのだ。
「平和だからな」
「それでね」
「記事にするにもな」
「そこまでの記事ないんだよね」
「お勧めの本の紹介とかもな」
大貴はこうしたことも話した。
「それでスペース増やすにしてもな」
「もう一冊何か読まないといけないし」
「短い作品読むか？」
「短いって？」
「志賀直哉とかな、あの人短編作家だろ」
それでとだ、大貴は歩に提案した。
「だからな」
「志賀直哉を何か読んで」
「それで紹介書いてな」
そうしてというのだ。
「スペース埋めるか。それかうちの学校の怪談の話書くか」
「怪談って。うちの学校にあったかな」
歩は大貴の今の提案に怪訝な顔になって返した。
「そんなの」
「用務員さんに聞いたら知ってるんじゃないか？」
「そうかな」
「ああ、そうするか？」
「ううん、もう校内とか読書に頼らずに」
歩は考えつつ大貴に提案した。
「何かこうね」
「こうって何だよ」
「学校の外に出て」
「面白いこと見付けてか」
「記事にする？何でもいいから」
「それだと学校新聞じゃないだろ」
大貴は歩の今の提案に難しい顔になって返した。
「もうな」
「それもそうか」
「そうだよ、学校の中で何かないかよ」
「学校の中でねえ」
歩は大貴の冷静な突っ込みに自分が名案だと思ったそれを引っ込めつつ応えた。
「それだね」
「学校新聞なんだからな」
「じゃあ部活の特集でいく？」
「何処にする？」
「サッカー部とかの」
「サッカー部な、うちのサッカー部そこそこ強いけれどな」
それでもとだ、大貴は歩に難しい顔のまま言葉を返した。
「もう一つ変なことしてるだろ」
「ああ、先輩の一人がユーチューバで」
「変な場所行ったりしてな」
「それで遊んでるんだよね」
「そういうのしてるからな」
「ち
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