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魚を釣るよりも
第二章

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 この日もクレオパトラと共にいる時間を楽しむことにした、家臣達に魚のことをくれぐれも頼んでから。
 それで彼女と共に船に乗りナイル川での釣りを楽しんでいた、そうしているとだった。
 アントニウスは一匹また一匹と見事な魚を釣っていく、クレオパトラはその釣りを見て笑みを浮かべて言った。切れ長の目に高い鼻が目立つ顔だ。艶やかな化粧が映えていて薄いエジプトの服の下には見事な肢体がある。黒髪も実に整っていて装飾も奇麗に飾っている。
「お見事ですね」
「うむ、私は釣りもだ」
「お得意ですか」
「そうなのだ」
 こうクレオパトラに言うのだった。
「私はな」
「釣りもですね」
「凄いのだ」
「戦いだけではなく」
「こちらもだ」
 こう言うのだった。
「凄いのだ」
「それは何よりですね」
「カエサルとは違う、確かにな」
 自身が仕えもしていた彼についてはだ、憧憬に懐かしさも感じていた。そこには嫉妬ではなく肯定があった。
「素晴らしい方だった、教養も高く」
「そうでしたね」
「器が大きい方だった、私は教養はないが」
 カエサルと違ってというのだ、何しろ膨大な借金のうちには高価な書籍を惜しみなく買っていたことも入っていた位だ。
「しかしだ」
「魚を釣ることはですか」
「兵を率いることと力、武芸にな」
「そちらもですね」
「カエサルには負けていないのだ」
「それは何よりですね」
 微笑んで応えたクレオパトラだった。
「魚釣りよりは。しかし」
「しかし?」
「もっといいものを釣ってみませんか?」
 釣りを続けるアントニウスに言うのだった。
「そうしてみませんか」
「魚よりもか」
「はい、よりいいものを」
「それは何だ」
 アントニウスはクレオパトラにいぶかしむ顔で尋ねた。
「一体」
「貴方はおわかりになられる方だと思いますが」
「私はか」
「カエサルに認められた方ですね」
「如何にも」
 このことについては胸を張って答えた、カエサルを敬愛しているが故に。
「私はそのうえで今に至る」
「カエサルに認められ頭角を表されて」
「そしてだ」
「戦いにも勝たれ」
「偉大なるカエサルの跡を継ぐ者はだ」
「貴方ですね」
「私以外にはいない」
 強い、これ以上はないまでのそれを以て答えた。
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