STAGE1:こんばんは、僕が模犯怪盗だ
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自分の体の異常に湧いてくる力、普段以上の注意力、精神の高ぶりに気付く。
「力が湧いてくる……やつが来るぞ!」
「一瞬たりとも気を抜くな!」
警備員たちの号令。それに合わせるように、【ブティックの二つ隣にあるショッピングモールの屋上から】怪盗クルルクの声が響いた。
『お待たせしたね警察諸君!僕を捕まえられるというのなら、ここまで来るがいい!!』
どよめき。警備員が、それに従うポケモンが、野次馬達が一斉にショッピングモールへと向かう。現れた犯罪者と周囲の期待の高まりという熱に浮かされたように、一人残らずだ。
「おいお前じゃまだ、どけ!」
「野次馬は職務の邪魔だからどいていろ!」
「クルルクに最初に会うのは私よ!」
入り口で押し合いへし合いしながらも、みんな中へ入って屋上に向かうのを確認し──クルルクは夜空から、ライアーとテテフと一緒に悠々と地面に降り立つ。スケートボードは着地するとボタン一つで元のシルクハットに戻り、斜めに被りなおした。
屋上で声がした仕掛けはなんのことはない。午前中の時点で、タイマーをセットしたレコーダーを屋上の隅に隠しておいただけのことだ。
警備員のいなくなったブティックに、クルルクは胸を張って侵入する。
中にいるのは、ブティックの店員たち。それと業を煮やした警備員のボスだった。中年の男性で、生え際の後退し始めた額まで真っ赤になっている。テテフがちょっと不安そうにクルルクの後ろに隠れた。
「こんばんは、グルービー警部。予告通り、『移ろいの靴』をいただきに参上したよ」
「ええいあいつら、毎度あっさり釣られおって……」
「はは、部下の教育が足りないんじゃないかなあ」
丁寧な一礼をする怪盗に、警部は忌々しげに舌打ちする。いつもこうだからだ。警部がどれだけ事前に見え透いた誘導に乗るなと言い聞かせても、警備員たちは声のするほうに猪突猛進してしまう。
本当はテテフの鱗粉には力を与えるだけでなく、強いお酒を飲んだ時のような酩酊状態にする効果があり、判断力を失わせるからなのだが、わざわざ手品の種を明かすマジシャンはいない。クルルクはけろりとした顔で警部を笑った。もっと言えば効果が消えると一時的に反動で体の力が抜ける副作用もあるので、あっちの屋上へ着いたが最後ここへ戻るのは時間がかかる。
「どうする? 警部が僕をポケモンバトルで止めてみせるかな?」
「するか!」
「なら、いつも通りお宝はいただいていくよ」
クルルクは店内を見渡す。いつもなら大事そうにケースにでも入れてお宝を保管しているはずだ。だが、どこを見てもない。
「……あれ?」
「フン、いつも同じ手が通用すると思うなよ!『移ろいの靴』は俺がこの
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