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SoA 青空に咲く、黒と金
前日譚1-2
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  ◆

 少女について行って薪を燃やす。多少湿っていてもオレの炎ならば関係ない。大して苦労はせずに仕事をこなし、そろそろ時間かなと思って族長さまの家へと向かう。
 その途中で、嘆きを聞いた。
「――――ッ!」
 言葉にならない声だけの叫び。身も凍るような魂の叫び。
 何だ、一体何があった? オレは急いで、声のした方に走り出す。
 そこで見たのは。
「一体なんだってんだ! 何でこの里が人間にばれる!?」
「翼を奪え!」
 襲い来る人間たちと、狂乱するアシェラルの民。一人のアシェラルが地面に倒れ、背中から血を流している。そこに本来あったはずの翼は、根元から切り取られていた。
 オレは愕然とした。何故、何故だ? 何故、この閉ざされた里に外部の人間が?
 その答えは、人間の言葉から解った。
「ラッキーだな! 道に迷ってアシェラルに遭遇! 翼は高く売れるんだよなぁ!」
――成程。
 道に迷った愚かな人間たちが、偶然この場所を見つけて襲撃したというのか。
 ならばオレは「救世主」の名にかけて、これを撃退しなければならない。
 視線をめぐらせ、状況を確認する。やって来た人間は十人。随分多い。何かの一団だろうか?
 人員はほとんど男で構成されているが、中には女もいた。女は不安そうな顔で、男たちの後ろに隠れている。全員が全員、侵略者であるという訳ではなさそうだ。三人の男は女を後ろに庇ったまま、その場から動こうとしない。
つまり実質、敵は六人。
「救世主さま!」
「おお、我らが救世主さま、お助け下さい!」
 逃げてきたアシェラルがオレを見つけて必死に呼びかける。任せろとオレは頷いて、男たちの前に立ち塞がった。
オレの目の前には翼を奪われたアシェラルがいる。オレはそっとそのアシェラルを抱きかかえると後ろに横たえて、これ以上の怪我を負わないようにした。抱えたアシェラルはまだ息があるが重傷だ。すぐに他のアシェラルがそいつを受け取り、巻き込まれないように後ろに下がった。
 そうだ、これはオレの戦いだ。「救世主」と侵略者の戦いだ。そしてこういった場合、「救世主」は絶対に勝たなければいけない。「救世主」は全てを救い、守る絶対的な存在なのだから。
 立ち塞がったオレを見て、男の一人が声を掛けた。
「何だ貴様は? 貴様一人で俺たちに立ち向かおうというのか?」
 その顔に浮かんだのはあからさまな侮蔑と、どういたぶってやろうかと思案する嗜虐心。どのようにここに来たにしろ碌な奴じゃないなと思い、オレは相手を嘲笑うように鼻を鳴らして答えた。
「『救世主』メサイア、この村を護る者。アシェラルの次期族長候補にして炎使い。あんたらみたいな屑を倒すのならば、オレ一人で十分だ」
 オレの挑発に、男は顔を真っ赤にした。単純な奴だ。
「ふざけるなよな
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