前日譚1-2
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ぁ! 救世主ヅラしやがって! 馬鹿にしてんのか!!」
「最初から救世主だ、救世主ヅラなどしていない。ああ、勿論馬鹿にしているとも。気付かなかったのか? だとしたら本当に正真正銘の馬鹿だな」
オレが言い終わるか言い終わらないかの間に。
一閃。
男がオレの目の前で剣を振った。しかしそれはオレに当たる寸前で空振りした。オレの赤い髪が切られて風に吹き散らされた。
男の目には、狂気と怒気。
「馬鹿にするんじゃねぇ! 俺はこの腕の一振りでてめぇを殺せるんだ」
「ならばこっちは、この腕の一振りで貴様を火達磨(ひだるま)に出来る」
言うが早いか。
オレは地を蹴って奴と距離を取り、即座に魔法素(マナ)を組んで式を作り、それを一気に崩壊させた。
――そうさ、魔法はこうやって放つ。
途端、現れた炎は男を包み込み、男は一気に生ける焚き火と化した。
この世界、「アンダルシア」には魔法素(マナ)と呼ばれる目に見えぬエネルギー物質があり、オレたち魔導士はそれを感覚的に組み合わせて「式」を作り、組んだ「式」を一気に崩壊させて空間に歪みを作り、それを魔法とするんだ。魔法素(マナ)にはそれぞれ「属性」があって、干渉できる事象が「属性」によって異なる。例えば、属性「火」は「火」に関する事象を起こすことができるが、「水」を操ることはできないというわけだ。魔導士は目に見えず、触れることも出来ない魔法素(マナ)を生まれつき組み、そして「式」を破壊する力がある人たちのことなんだ。魔法素(マナ)をどう感じるかは人それぞれだから、詠唱も何もアドリブだ。自分で自分の「式」をイメージできれば何を唱えたって構わない。魔法は理論じゃない、才能がものを言う。魔導士の世界即ち才能の世界だ。オレのこの「炎」も生まれつきの才能によるものだしな。
オレは何も唱えなかった。ただ身に着いた感覚だけで魔法を使い、男に向けて放った。慣れれば詠唱なんざ要らないんだよ。
「うがぁぁぁ……熱ぃ、熱ぃよぉ。水、誰か水、を……!」
苦しみ悶える男。だがな、オレは言ってやった。
「翼を奪われたアシェラルが、どれだけ苦しむのか分かっているのか?」
「助けて……助け……」
そうさ、あんたが先程翼を奪ったアシェラルはきっと、その痛みに永遠に苦しむことになるだろう。翼はアシェラルにとっては手足と同じくらい大切な器官。それを易々と奪っておいて、助けてくれなんてよく言える。オレが気付くのに遅れたばっかりに、あいつは一生不自由なままだ!
「甘えるんじゃない。さっさと死ね」
オレは一気に火勢を強くした。苦しませずに殺してやる。有り難く思え。
傍から見ればこれはちっとも「救世主」じみてはいないだろう。いっそ悪魔の所業にすら見えるはずだ。だがな、仕方がないんだ。オレの持っているのは破壊の力。破壊の
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