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才能売り〜Is it really RIGHT choise?〜
Case3 七夕綺譚〜やさしきいのちのものがたり
Case3-1
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った。だから医学部に進んだけれど、自分で叶えてやりたいというプライドもあった。まだあの子には時間があったし、だから私は才能屋を想い焦がれつつも、医学部での勉強にひたすら励んだ。
 高梨裕斗。私の救いたい子の名前。彼は私、裕理の弟だ。生まれつき病弱でろくに学校に行ったこともないけれど、「将来は物語作家になりたい」という夢を持つ子。私は彼を救いたいから医学部に行った。いつかその病気が治るように、私の手で治せるように。私は彼のために自分の人生をささげたと言っても過言ではないから裕斗はそのことを悩んでいるようだったけれど、これが私の選んだ道なんだ、気にしなくていいのに、優しいあの子は気にしてしまう。私はそんな裕斗が愛おしくてたまらなかった。だから勉強を頑張れるんだ。
 愛華にも事情は話した。あの子が元気なときに、あの子の病室に連れていったこともあった。あの子は年がら年中ノートにお話を書いていて、私はそれを読むのが楽しみだった。身内贔屓と言われても構わない、あの子は文才があるよ、絶対。
 愛華はその辺りの事情をよく知っている。だから私にその話をした後、軽く釘を刺すように言った。
「裕ちゃん、裕斗くんのことがあるからって、早まって才能屋に駆け込むことはやめてね? 才能屋さんに頼っても、必ずいい結果につながるとは限らないんだから」
 そんな愛華にもちろん、と私は答えた。
「才能屋とやらに頼るよりもまず、私は私の手で裕斗の病気を治したい。才能屋に頼るのは最終手段だってば。安心していいよ?」
「愛華はあくまでもゴシップの一つとして話しただけだから」
「わかったってば」
 心配げな愛華にそう答えて、私はちらりと時計に目をやった。あ、まずい、授業が始まっちゃう。
「これから五限の授業が始まるから私は行くね。愛華は六限だっけ? じゃあ放課後また会おうよ。じゃあね」
 そして私は教科書やら何やらを持って教室へ急ぐ。根を詰めすぎないでねと、愛華の声が追いかけた。

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