490部分:第三十八話 明るい運命その十一
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第三十八話 明るい運命その十一
だが彼女はまだそのことを知らない。星子にここでこんなことを言った。
「ねえ、このコロッケって」
「どうしたの?」
「何か食べやすいわね」
こう言うのだった。
「いつものよりもね」
「あれっ、そうかな」
「うん、美味しいし」
そしてこうも言った。
「いつものよりもね」
「いつものコロッケと変わらないと思うけれど」
「そうかしら」
「うん、お母さんそうよね」
星子は母に尋ねた。
「このコロッケいつも買ってるコロッケよね」
「ええ、そうよ」
母もその通りだと話す。
「いつものお肉屋さんのコロッケよ」
「そうよね。同じよ」
こう姉に顔を向けて話す。
「味いつもと同じだと思うけれど?」
「そうかな。いつもより美味しいけれど」
星華の言葉は変わらない。
「気のせいかしら」
「お姉最近前よりも身体動かしてるからじゃないの?」
星子はその理由をそこに求めた。
「部活。これまでよりも頑張ってるでしょ」
「身体が自然に動くけれど」
「そのせいじゃないの?何か表情も明るいし」
「明るかったら食べ物も、なのね」
「病は気からっていうし」
星子は食べながらその話をした。
「暗い気持ちだと食べてもね」
「そういうことね」
「そうじゃないの?」
「言われてみればそうかも」
星華も妹のその言葉に納得した。
「明るいから食べても」
「そうそう。じゃあコロッケは一杯あるし」
「そうね。もっとね」
「食べよう、お姉」
星子は満面の笑顔でコロッケを一個箸に取りながら述べた。
「今日もね」
「うん、じゃあ」
こうしてだった。二人はコロッケを食べ続ける。そのコロッケは確かに美味かった。星華は今何を食べてもそう感じられるようになっていた。
第三十八話 完
2011・1・20
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