第五次イゼルローン要塞攻防戦7
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に肉薄し、陸戦部隊を送り込むことが可能である。
接近する艦隊を邪魔する駐留艦隊は、まともに戦うことなどできない。
そうなっていれば、被害は大きいものの要塞が攻略できる可能性は残っていただろう。
そして、被害が大きくとも、攻略をしてしまえば、未来の損害はそれ以上に少ないものである可能性がある。
それを見せていれば、司令部は攻撃に意見が傾いていたかもしれなかった。
上層部にとっては、その可能性は喉から手が出るほどのものであっただろう。
それを隠したと知れれば、責任を追及されるのは確実。
だが、ヤンはそれが悪いことだとは思わなかった。
責められるのであれば、それも仕方がない。
退職が数年ほど早くなっただけだ。
アロンソの無表情な瞳が、ヤンを捉えていた。
それをまっすぐに見返せば。
「……私はあの場で最善と思える手を取っただけです。ですが」
「何を君が気にしているかわからないが」
そんなアロンソは静かに、頬を緩めた。
「私はお礼を言いに来ただけだ。部下を助けてくれた、礼をいう」
目を開いたヤンに対して、アロンソは再度敬礼を送った。
それは美しさもある、見事な敬礼であった。
+ + +
宇宙歴792年、帝国歴483年5月7日。
第五次イゼルローン要塞攻略作戦は、同盟軍の撤退によって終結することになる。
被害艦艇が少なく、敵駐留艦隊と要塞に対して大きな被害を与えたことから、再度の攻略も検討されたが、頼みの並行追撃作戦が敵に知られたこと、さらには無人艦の多くを救出時に使用したことにより、シトレ大将はこれ以上の攻撃は不可能と判断し、被害が少ないうちに撤退することを選択したのだった。
要塞の攻略こそはならなかったが、同盟軍にとっては敵要塞に肉薄し、さらには被害艦艇数も一万を下回り、近年の要塞攻略作戦では最も少ない被害数であった。敵駐留艦隊に対してもほぼ同数の被害を与えており、むしろ同盟軍の勝利といっていいとの論調が自由惑星同盟に広がっていくことになる。
味方殺しさえなければ、勝っていたと、多くの国民が叫ぶ。
イゼルローン回廊では――同盟軍の墓標を増やしただけにすぎなかったのであるが。
そのことに触れることは、誰一人としていなかった。
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