第五次イゼルローン要塞攻防戦7
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視線を変える。
正面には――同盟軍の明るい光が、彼らを待ち受ける街明かりの様に輝いている。
+ + +
傷ついた第五艦隊を迎えるように、同盟軍の残存艦隊が広がった。
比較的無傷であった艦隊が前に出て、駐留艦隊を警戒する間に、スレイヤーの率いる艦隊を包んでいく。わずか数千にまで数を減らし、無傷といえる艦隊はほとんどない。
偶然にも被弾を免れた数隻が奇跡ともてはやされたくらいだ。
それは良くあるような奇跡の光景ではあったが、少なくとも生き残った者たちにとっては奇跡だろうが、偶然であろうが何だって良い事だ。
スレイヤー艦隊を回収すれば、同盟軍艦隊は静かに下がっていく。
撤退するか、さらなる攻略に乗り出すかは今後の判断であろうが、少なくともこのまま継戦を続けるにしては、兵は疲弊をしていた。戦闘が始まって長時間休みなく戦闘を続けていたことも大きかったが、何よりも要塞主砲を間近に見たことで、多くの兵たちは体よりもむしろ心を大きく折られている。
それは上層部にしても、そうであったのだろう。
このまま攻撃を続行しようという言葉は、最も過激な意見をしていたビロライネンからも出てはこなかった。
それは帝国軍もそうだったのだろう。
いや、帝国軍にとってはそれ以上の被害がある。
単純な艦艇の損傷数もそうであるし、何より疲労もだ。
数倍にもなる艦隊との戦闘、味方殺しの一撃、そして無人艦による自爆攻撃。
駐留艦隊にとってはまさに地獄の数時間だったであろう。
下がりゆく同盟艦隊を追いかける素振りすら見せられない。
むしろ助かったと安堵しているのは、駐留艦隊の数の方が多かったかもしれない。
何よりも味方であったはずの、要塞から撃たれたのだ。
それを仕方がなかったと考えるものは、誰一人としていなかった。
傷ついた艦は、それでも睨むようにイゼルローン要塞の前でたたずんでいる。
「閣下! 要塞司令から連絡です――逃走する敵艦隊を追撃せよと」
その言葉に、ヴァルテンベルクは目を見開いて、通信士官を見た。
通信士官もまた、報告するか迷ったのだろう。
そこには苦い感情をもって、通信機を抑えている。
「はは。この後で、要塞司令官殿は我々に攻撃しろというのか」
「はっ」
「糞でも食ってろと伝えろ――帝国貴族にあるまじき、下品な言葉を、失礼した」
不愉快げにヴァルテンベルクは鼻を鳴らした。
+ + +
イゼルローン要塞から距離を取った巨狼の顎の手前。
一時的に陣形を整えながら、兵士たちには順番に休憩が命じられた。
このまま戦うか、あるいは引くか。
それを上層部が相談する時間と同時に、疲労を少しでも回復させる休息でもある。
参謀各員
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