第五次イゼルローン要塞攻防戦7
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
発した。
+ + +
光が伸びた――直後であった。
同盟軍本体から向かう艦隊が、次々と爆発し――衝撃波と破片をまき散らした。
その艦隊は、元々はイゼルローン要塞の破壊を目的にした無人艦群だ。
敵の砲撃が早まったために、使用することがなかったため無傷で残っていたが、この段階では惜しげもなく、全てを投入した。
持てる分全ての爆薬を積んだ無人艦は、砲撃を受ける直前――要塞に向かう途中で盛大に自爆したのだ。
むろん、離れた場所での自爆であるため、要塞に大きな被害を与えることはできなかった。
だが、その爆発の衝撃は陣形を立て直すことに集中していた駐留艦隊を容赦なく襲った。
艦艇の破片は容赦なく降り注ぎ、あるいは衝撃波によって操作が狂った艦が、隣にぶつかる。大きくはないが、決して少なくはない被害を駐留艦隊は受けることとなった。
「全艦隊――撤退だ!」
スレイヤーの号令の下に、第五艦隊第一分艦隊は疾走している。
それはただ漫然とした、逃走ではない。
目的を持った、逃走。
要塞主砲がなくとも、敵の要塞からは単座式戦闘艇―−ワルキューレが追いかけ、補助砲が唸りをあげる。そぎ落とされるように、一隻また一隻と艦隊では破壊が行われ、炎をあげて、爆発していく。
だが、艦隊は恐れることなく、ただ走り続ける。
イゼルローン要塞の外周を回るようにして、それはいつかのセランが見せたスイングバイに似た軌道を持ちながら、走る。
一周を回って要塞から離れれば、同盟軍本体までは一直線だ。
トールハンマーの再充電時間を考えれば、航路は最短距離を向かうしかない。
しかし、それは――最も危険な航路、すなわち駐留艦隊の脇を通過する。
通常であったならば駐留艦隊に邪魔をされ、あるいは一万を超える艦隊の激しい攻撃によって五分と持たず全滅する可能性もあっただろう。だが、先の無人艦による自爆のために、駐留艦隊の動揺は大きく、駐留艦隊は組織だった攻撃ができない。
一斉射撃ではなく、個別攻撃あれば防御壁で十分に対応が可能である。
そして、駐留艦隊の脇を通るということは。
再充電を完了したトールハンマーが再び、前方に光の渦を作り出していた。
しかし、撃てない。
第一分艦隊は駐留艦隊の脇を通り、そして、駐留艦隊の斜線上を疾走している。
要塞に被害がない状況で――さらに言えば、たかだか一分艦隊を攻撃するために、もう一度味方殺しをするまでは追い込まれてはいなかったようだ。
要塞司令官は、再びトールハンマーを封じられたことに歯ぎしりをしていることだろう。
背後で駐留艦隊が遠ざかるまで、光の渦を睨みつけていた、アレスは小さく息を吐いた。
見れば、同様に息をスレイヤーが吐いていた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ