十五 始まりの傀儡
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く回避できたいのが、檻から抜け出た。
いのの姿がサソリとチヨの間で、空を舞う。しかしながら、チヨに回収される前に、サソリは既に次の一手を打っていた。
腕の檻。その内の一本から仕込まれた何かが噴出される。
それは毒々しい色を孕んだ煙。
サソリの身体に、そして三代目風影の傀儡にも仕込まれているモノと同じ色を帯びたソレは、檻から逃げ出した獲物を追うように迫りくる。
「毒か…!!いの!!」
逸早く毒煙だと気づいたチヨが叫ぶ。チヨの指示に従い、いのは息を止めた。
濛々と立ち込める紫紺の煙はたちまち、いのの身体を包み込む。
「毒煙なら、動きは関係ねぇぜ?」
どんなに運動神経が良くても、煙という気体なら逃げられようがない。回避不可能だ、と言外に冷笑するサソリを苦々しげに睨んだチヨは、即座にチャクラ糸を引っ張る。毒煙から引っ張り出そうとしているのを見て取ったサソリは、「させるか」と開いていた手を軽く握った。
すると、千本もの腕で形成された檻から、今度は別の噴射口が出現する。新たな噴射口から飛んできたソレを、チヨは直観で弾き返した。
「ほお…?」
自分の元へくるくると回転しながら飛来してきたソレを、サソリは軽く首をめぐらすことでかわした。
背後に落ちた、ロープつきクナイ。それを巻きつかせる事で、いのを毒煙の中に留めさせようと考えていたサソリは、思惑が外れた事に、逆に感心めいた表情を浮かべた。
「かわすと思っていたが、なかなかどうして……勘が良いじゃねぇか、チヨ婆」
チャクラ糸を手繰り寄せ、いのを無事に毒煙の包囲網から脱出させたチヨを称賛する。
そのままいのがチヨの元へ戻るその前に、サソリはひそやかに双眸を細めた。
「だが、忘れてねぇか…?」
刹那、背後から風を切る音がして、いのは反射的に身を捻らせた。激しい痛みが肩を掠めていく。
「あぐ…ッ」
「いの!!」
毒煙を抜けて、チヨのほうへ戻ろうとしていたいのの身体が、ガクリと崩れる。
肩を押さえるいのを目にして、チヨの顔が青褪めた。
いのの肩。押さえている手からも、どんどん液体が溢れ出る。
それは、血だけでなく──。
「俺は傀儡師であると同時に、」
紫色の毒を滴らせたワイヤーを腹部から伸ばしたサソリが、双眸をゆるゆると細めた。
「俺自身も傀儡なんだぜ?」
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