前日譚 偽りの救世主(メサイア)
序章 「救世主」の使命
前日譚1-1
[2/2]
[9]前 最初 [2]次話
がオレを「救世主」と呼び、誰もがオレに「救世主」になることを望んだ。だからオレはひたすらに「救世主」であろうと頑張った。ゆえに通称は「救世主(メサイア)」だ。
今日だって。
「メサイア様―!」
道行けばかかる声。何事かとオレは振り向いた。
オレの視線の先にいたのは一人の娘。彼女は困ったような顔をしてオレに近づいた。
「昨日、雨降ってましたよね? それでですね、私誤って薪を家の外に置いてしまって、それで薪に火がつかなくて困っているんですよ。だから」
「解った」
オレは頷き、彼女に「どこだ?」と問うた。彼女は慌ててオレを件の家に案内する。
そうさ、オレは「救世主」。全てのアシェラルを救わなければならない存在ゆえに、どんなに小さなことでも頼まれれば必ずしなければならない。ああ、やってやるさ、この力の続く限り。オレはその生き方しか知らない。どんなに他の存在になりたいと願っていても、「救世主」という立場から逃れるすべをオレは持たない。だからオレは変わることを願ってはいけない。変化を望むは罪なのだ。オレは「救世主」としての以外の生き方を知らないんだから。それ以外は教わらなかったんだから。
だからオレは今日も淡々と「仕事」をこなす。午後には族長さまからの講義を受ける。
実際「救世主」なんてそんなものさ。全然大した存在なんかじゃない。
それにオレの炎の力は少しばかり――破壊に向きすぎている。現実世界じゃあまり役に立たないんだ。それこそ戦争でも起きない限りは、な。
[9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ