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才能売り〜Is it really RIGHT choise?〜
Case2-3
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だ、どこか痛いのか?」
「違うよ、違うもん。これは嬉し涙なんだよぅ」 
 心配げなかずくんに、あたしはそう笑って答えた。でも本当は、心が痛かった。痛くて痛くてたまらなかった。
 そうだよ、あたしはずるい女だ。才能屋っていう目に見える奇跡に頼って、自分を磨く努力も大してしないで「あたしはブスだ、みじめだ」って自己憐憫に浸って、その挙句にはかずくんに恋するたくさんの女の子たちを蹴落としてあたしがかずくんの心を射止めた。
 努力もしないで、奇跡に頼って。
 それがわかっているから、いざこういった瞬間になってみると、嬉しいけれど同じくらいの罪悪感が湧きあがってきて心が痛い。
 あたしは、思ってしまった。
 これは偽りの愛だ。誰かを蹴落として、本当の自分じゃない自分でしている偽りの愛だ。
 あたしはかずくんとの恋人時代、確かに幸せだったけれど、心の底には罪悪感がしこりとなって残っていて、心から幸せだったとは言えなかった。
 そして今、あたしはかずくんと結婚する。心のしこりはますます大きくなるのだろうか。
 あたしはそれが怖かったけれど、せっかくここまで行きついたんだし結婚してしまえという声が、あたしの中でささやいた。それと罪悪感があたしの中で喧嘩して、あたしは思ってしまった。
――もう、どーでもいいや。
 なるようになってしまえ。
 今が幸せな瞬間ならば、その幸せを精一杯楽しんでしまおう。
 だからあたしは、泣き笑いのような表情を浮かべてかずくんに言った。
「書類、取りに役所まで行こう」
 その言葉を聞いて、かずくんはすっごく嬉しそうな顔をした。
 そうだよ、これは偽りの愛だよ、本当の愛じゃないかもしれない。
 でもね、それでもね、これはあたしの選んだ道、正しい選択だって思ってる道だから。
 目いっぱい楽しむよ。それの何が悪いの?
 あたしはそう、自分を正当化した。

  ◇

 でもね、幸せな結婚生活は長くは続かなかったんだ。
 あたしの美貌はいつになっても衰えない。だからかずくんはあたしの浮気を疑い始めた。あたしが着飾って出かけるたびに、敵意に満ちた視線をあたしに向けるようになった。
 結婚したら、現れた本性。それでもあたしはまだ幸せだった。
 あんなことが起こるまでは。
「こんな不味い飯なんて食えるか」
 ぶちまけられたあたしのカレー。
 かずくんが疲れただろうからって、せっかく気合入れて作ったのに。
 料理のできないあたしはいつも、かずくんにおいしいものを提供するためにスーパーのお惣菜を買っていた。そのせいで家計はいつだって火の車。食費の占める割合がハンパないのだ。そのせいでかずくんは趣味の魚釣りを止めて、ひたすら働かなくてはならなくなった。あたしは専業主婦をやっていた。掃除も裁縫も立派にこなせる奥
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