巻ノ百五十 本丸の死闘その十
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「全くな」
「いえ、それは違います」
「僧正様は立派な方です」
「僧侶としても人としても」
「真に天下泰平のことをお考えです」
「そして万民のことを」
「天下泰平になって欲しい」
天海は弟子達にこうも述べた。
「わしの幼い、そして成長してからもですな」
「長くですな」
「そう思われていたのですな」
「まことに」
「そうであった、そしてじゃ」
さらに話す天海だった。
「それが適うのならと思ってな」
「これまでですな」
「学問に励まれ修行を積まれ」
「生きてこられたのですな」
「そうしてきた、しかし欲もまだあり何かと至らぬことも多い」
長く生きてもそう思うばかりだというのだ。
「そうしたわしだからのう」
「だからですか」
「その様に言われますか」
「うむ、そのわしを目指すよりもな」
それよりもというのだ。
「御仏ご自身を見てじゃ」
「そしてですか」
「目指すべきですか」
「その方がよいですか」
「そうじゃ、だからな」
それでというのだ。
「お主達はな」
「お師匠様よりもですか」
「御仏を見て」
「そうして修行と学問に励むべきですか」
「そうするのじゃ」
この言葉は変わらなかった。
「よいな」
「お師匠様がそう言われるなら」
「そうさせて頂きます」
弟子達は素直なままだった、そうして師と共に座禅を組みその日は寝た。天海は星からあることを読んだがそれについて思いつつも天下のことを考えそのうえで己の修行も行っていた。百歳に達していてもそれを続けていた。
巻ノ百五十 完
2018・4・7
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