485部分:第三十八話 明るい運命その六
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第三十八話 明るい運命その六
そしてそれを踏まえてだ。椎名は話したのだった。そして狭山と津島にも顔を向けてだ。そのうえであらためて話したのであった。
「そういうことだから」
「俺達もだな」
「そうすればいいのね」
「そういうこと」
これを話すのであった。
「嫉妬にかられたら何にもならない」
「そうだよな、絶対に」
「私も。嫉妬したことあるけれど」
津島は自然にだ。顔を俯けさせて言ったのだった。
「それって結局何にもならないから」
「そんなことがあったのかよ」
「うん。親戚が凄くいいおもちゃ持ってたのよ」
子供の、それも幼い頃のことを思い出しての話である。津島にとってはいい思い出ではない。実際に彼女は今暗い顔になっている。
だがそれでもだった。彼女は今皆に話すのだった。
「それが羨ましくて欲しくて」
「けれどその親戚のおもちゃだったんだな」
「取ろうと思ったの。それで自分のものにしようって」
「それが御前の嫉妬なんだな」
「これって嫉妬よね」
俯きながら狭山達に問う。
「やっぱり」
「ううん、子供の頃って自然にそんな風に考えるけれどな」
狭山は腕を組んでこう返した。
「けれどそれって嫉妬だったのか」
「そうじゃないかな」
「羨ましいって思ってそれでそれが妬みになるとそう」
「妬み。そうよね」
津島はまた椎名の言葉を聞いて言った。
「それ、あったわ」
「妬んでそれで取ろうとしたのね」
「それで自分のものにしたいって思って」
「取ろうとした」
「そうだったの」
こう話すのだった。
「けれど。その娘の部屋に入ろうとして」
「それでどうなったんだ?」
「急にお父さんに呼ばれて」
そうなったというのである。
「そっちに行ってそれで終わったけれど」
「じゃあ若しそこで親父さんに呼ばれなかったら」
「多分」
取っていたと。そう言うのである。
「若し取っていたらやっぱり」
「よくなかったね」
赤瀬が言った。
「そうだね」
「それをしなかったのってやっぱり」
「よかった」
椎名ははっきりと告げた。
「それでその後は」
「思いなおしてね。もうそんなことはしなかったわ」
本当にすんでのところで止まったというのである。
「よかったわ、けれど私自分でしてないから」
「自分でしなかったけれど止まったのはいいことだよな」
「そうですよね」
陽太郎と月美はそのこと自体をよしとした。
「取らなくて何よりだったよ」
「私もそう思います」
「そうなのね。よかったのね」
「だろ?取るよりはずっとさ」
「いいと思います」
「そうなのね」
二人のその言葉を聞いてだ。あらためて頷く津島だった。
それで納得した顔になってその顔をあげてだ。
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