482部分:第三十八話 明るい運命その三
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第三十八話 明るい運命その三
「そんなことは」
「有り難うございます」
「御礼はいいけれどさ」
月美の感謝の言葉はだ。それはいいとしたのだった。
「それでも」
「それでもですか」
「俺でいいんだよな」
陽太郎からだ。こう月美に問うのであった。
「あの、本当に」
「私も」
するとだ。月美も陽太郎を見上げてだ。こう言ってきた。
「私でいいんでしょうか」
「何かお互い言うね」
陽太郎はだ。月美の今の言葉を聞いて思わず苦笑いになった。
そうしてだ。そのうえでこう言うのだった。
「今日は」
「そうですね。けれど」
「ああ。一緒に帰ろう」
微笑みになって月美に述べた。
「これからさ」
「はい、それじゃあ」
こうしてだった。二人はその帰り道についた。二人で横に並んで夜の道を歩く。暗がりが灯りに照らされている。その中を二人であった。
二人で並んで歩きながら。陽太郎は言うのだった。
「いつもこうして歩いてるけれど」
「今日は、ですね」
「何か違うよな」
戸惑った笑みでの言葉だった。
「普段とさ」
「そうですね。一緒にこうして歩くって決めてましたけれど」
「それでもだよな」
「はい、あんなことを話したから」
「親父さんとお袋さんが」
「普段はあんなこと言わないんですよ」
陽太郎に顔を向けて述べるのだった。
「あの、本当に」
「それでもああしてか」
「そうなんです。本当に急に」
月美は顔を正面に戻した。そのうえで俯き加減になって話すのだった。
「あんなことを」
「驚いたよ」
「そうですよね。私もです」
「ただ」
「ただ?」
「親父さんもおふくろさんも本気だったな」
それは間違いないというのだった。
「それは確かだよな」
「そうですね。それは本当に」
「じゃあやっぱり」
また言う陽太郎だった。
「俺達これからは真剣に」
「考えないといけないでしょうか」
「そんな話なんて夢だと思ってたよ」
二人はまだ高校一年生である。ならばそれも当然のことだった。
「結婚かあ」
「夢みたいなお話ですよね」
「けれどそれは夢じゃない」
「現実ですね」
「うん、現実なんだよ」
陽太郎はそのことをただ口にしただけではない。口に出してだ。そのうえで己の中で反芻していた。そのうえでの言葉であった。
「これは」
「はい、確かに」
「だから余計にこうなってるし」
「戸惑って」
また二人で言っていく。
「それでも何か」
「何か?」
「嬉しくないかな」
陽太郎は月美に今度はこう言ってきた。
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