第二章
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「普通に何万もいけるのにな」
「それで背が低いからメジャーデビュー出来ないってな」
それこそとだ、アダムも言ってきた。
「おかしいだろ」
「そうだよね、背なんてね」
それこそとだ、イブも言った。
「もうね」
「関係だと思うだろ」
「音楽にはね」
「ところがな」
アベルは言うのだった。
「それがなんだよ」
「違うんだ」
「ステージ映えを気にするんだよ」
「事務所の方は」
「ああ、音楽よりもな」
「ルックスもなんだ」
「俺達顔もな」
アベルは彼等の顔についても話した。
「この通りな」
「いいよね」
「ああ、しかしな」
「背はだね」
「この通りな」
まさにというのだ。
「低いからな、それも全員」
「四人共だから」
「声がかからないんだよ」
「そうなんだね、残念だね」
「全くだ」
苦い顔でだ、アベルはまた言った。
「俺もな」
「このままデビュー出来ないのかね」
アダムはシニカルな笑みで言った、酒と焼き鳥等鶏の料理が主体の肴は進んでいるが話はこんな調子だ。
「俺達」
「冗談じぇねえな、それは」
ケインはアダムのその言葉に不機嫌な顔で返した。
「本当に」
「全くだな」
アダムもその通りだと返した。
「俺達はな」
「どうにもな」
「折角ライブも動画もダントツ人気なのに」
イブは今度は溜息を出した、無意識のうちに自分のスマホで自分達の曲の動画を出してそれで観ていた。
「それがね」
「メジャーだけ無理とかな」
「世の中間違ってるよ」
こうアダムに言うのだった、とかく彼等は四人共だった。
メジャーデビュー出来ないことに鬱屈したものを感じていた、そうして。
四人共何とかならないものかと思っていた、しかし。
その彼等のところにだ、東京から人が来た。スーツに眼鏡をかけた真面目な外見の三十代の男だった。
その男が名刺を出すとだ、イブは驚いて言った。
「あれっ、この事務所って」
「知ってるのか?」
「大手声優事務所だよ」
アダムの問いに答えた。
「事務所出来て三十五年以上経つね」
「へえ、企業で三十年以上って少ないっていうけれどな」
多くの企業が起業しても三十年までに倒産するという。
「それでもか」
「うん、声優事務所でも老舗の方で」
「大手か」
「そうだよ、最低大手の一つで」
それでというのだ。
「最近女性声優さんのユニット編成してね」
「それでか」
「売り出してるよ」
「そうした事務所か」
「相当に大手だよ」
実際にというのだ。
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