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真ソードアート・オンライン もう一つの英雄譚
インテグラル・ファクター編
第一層攻略
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、薄暗かった部屋に明かりが灯り、大広間最奥の玉座に腰掛けていたボスモンスターがおもむろに立ち上がった。
 
《イルファング・ザ・コボルトロード》
 
その姿は体長3、4メートルはあろうかという巨大なコボルトだ。右手にアックス、左手にバックラーを携えたスタイルである。体毛のない赤い皮膚に丸みのある体は遠目にするとだらしなく太ったような体形に見えるが、その実あれは筋肉の塊だ。その膂力でもって、ボスは巨大な戦斧を楽々と担ぎ上げる。
続いてボスの前に小型――と言っても人間サイズ――のコボルトが数体ポップする。
 
《ルイン・コボルトセンチネル》
 
全員身に着ける鎧は同じものだが、武器はそれぞれの個体が異なったものを装備している。個体によって戦闘スタイルが違うことと、全身に纏った鎧のせいで弱点部位が狙いにくいことが厄介なモブである。

「じゃあ俺たちは打ち合わせ通り、ボスの取り巻きの対処だ。もたもたしてると増援がくるから、さっさとカタを付けよう」
「おーけー!」
「はい!」
「……」

細剣を使うコハルとフードのプレイヤーアスナの驚異的なクリティカルヒット攻撃によってうまい具合に取り巻きたちを倒していく。一方、ディアベルの指揮する5つのパーティは連携し、危なげなく確実に攻撃を加えている。ボスの残りHPはゲージ1本半といった所か。
ここまでは全て事前の打ち合わせ通りの流れであり、βテスト時との差異もなかった。この後も仕様に変更がなければ、ボスの残りHPがゲージ1本を切った所で最後の取り巻きがポップするはずだ。
そしてさらにボスの残りHPが減ってゲージが赤くなると、武器を持ち替えて攻撃パターンが変わる。持ち替える武器はタルワール。それ以降《曲刀》カテゴリのソードスキルを使うようになるが、あのパーティなら対処出来るはずだ。

「よし!みんな下がれ!俺が出る!」

ボスのHPゲージが赤くなっており、丁度武器を持ち替える場面だった。隣からキリトの叫ぶような声が上がったのだった。
 
「ダメだ!!全力で後ろに飛べ!!」
 
俺はキリトを一瞥して、すぐにその視線の先を追う。ボスの持っている剣は明らかに曲剣ではない事が分かる。あれは確か《カタナ》カテゴリの武器、野太刀だ。
ボスとの距離は30メートルほど。だが既にディアベルとボスは互いにソードスキル発動の動作に入っており、次の瞬間にはもう技を放っていた。
袈裟懸けに野太刀を振り下ろすボスと、横薙ぎに片手剣を払うディアベル。
ソードスキル発動は両者ほぼ同時だったが、剣速はわずかにボスの方が速い。そしてそのわずかな差が、戦いにおいては決定的な差になった。ディアベルの剣はボスに届くことなく、巨大な野太刀によって彼は斬り伏せられる。

「ディアベルがスタンした!追撃が来るぞ!」

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