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ラジェンドラ戦記〜シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
第三部 原作変容
最終章 蛇王再殺
第三十七話 王妃懐妊
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子孫の両方ともを殺害できる。そうすることで新王アルスラーンの心をも弑することが出来る。これぞまさに一石三鳥だと思う者は確実にいるはずだと。

ラジェンドラ王子があと三日で戻ってくるとの知らせがあったその夜、悪阻で苦しみ横たわる私の目の前で、暗灰色の衣の人影が床から滲み出るように現れたのを目撃したときにも、「ああ、やっぱり来た」という感じだった。

「くくく、王妃よ、はじめましてだな。俺はガズダハム。尊師に仕える忠実なる弟子の一人だ」

うう、頭が痛いし、気持ちも悪い。全く、こんな最悪な体調のときに襲撃を受けるとは。

「…ああ、蛇王ザッハークを復活させようと目論む一味の一人だな。私は今それどころではないのでお引取り願えないだろうか?」

「ふははは、何を馬鹿なことを。今ならば、ラジェンドラ王子のあの化け物じみた配下どもも王都にはいない。騎士見習いとは思えないほどの手練と言われるお主がこの様な無様をさらしている今、この今を逃す馬鹿がどこにいるというのだ。さあ、観念してもらおうか!」

ガズダハムがゆっくりとこちらに近づいてくる。まずい、寝台の上には武器も何もない。いや、この寝室に武器自体が何処にもないのだが。それでも寝台横の小さなテーブル、その引き出しの中には投げるものくらいはあったはずだ。確かその中にはラジェンドラ王子から頂いた物もあった。ただ、何か仰っていたな。「一番最初には投げるな。他に投げる物が無くなってから投げるように」と。…意味が判らないが、その通りにしよう。無抵抗なまま殺される訳にはいかないからな。出来る限り、抗ってやる。私は這うようにテーブルに手を伸ばし、引き出しを開け、その中身一つ一つをまるで片っ端から吟味もせずに投げつけてるかのように投げ続けた。

「ふははは、何だ王妃よ。そんなものがこの私に効くと思うのか?いいぞ、どんどん投げてくるといい!」

畜生、奴め、全く避けようともしない。インク壺、硯、文鎮、その他を次々と投げつけるが、一向に奴は動じない。まだか、もう少し、よし、今だ!ラジェンドラ王子から頂いた小箱!それを極力何気ない風を装って投げた。

「ふふふふふ、はははははははは、は?ぐっ、何だ!何なのだ!これは?」

やった、奴がひるんだ!よし、この隙に!私は胸元のペンダントを弄り、そこに付いていた笛を思い切り吹いた。たちまちものすごい音が鳴り、それを聞きつけて護衛が大挙駆けつけてきた。同時に床と天井から合わせて四つの護衛役の諜者の黒い影が滲み出し、奴の両手、両足首を斬りつけた。そして、身動きも取れないまま奴は護衛の一人に首を刎ねられ、更に切り刻まれて、物言わぬ骸とされた上で運び出された。さすがにそんな部屋で大人しく寝てはいられないので、私は部屋を移ることにしたが。

◇◇

俺がエステルに
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