第3章 儚想のエレジー 2024/10
24話 真意
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ごみごみとした乱雑で大雑把な街並みで、迷い込むプレイヤーが相当数存在すると言われる街をあたかも勝手知ったると言わんばかりに進むアルゴの後を追うこと数分。ものすごく見覚えのある黒人プレイヤーのショップやら、その常連の見覚えのある顔が通り過ぎ、寂れた飲食店らしき建物の中に通された。隅に蜘蛛の巣が張っていたりテーブルが汚れていたり文句を言うに事欠かない内装である。いや単に掃除不足か。
「ここならオイラ達以外に人はいないナ。………よし、じゃあ要件を聞こうカ」
「俺からの頼み事というと語弊がある。具体的にはそっちから聞いた方が齟齬が無いだろうよ」
左隣に座るキバオウを指差しながら、アルゴの視線を誘導する。
「………アー、もしかして、ファーミングスポットとか経験値稼げるエリアの情報希望とかカ?」
「そんなんいらん。………情けない話やけど、知りたいんは身内のことや」
「軍の中で一大派閥を築いている最古参の言葉とは思えなナ。こりゃあワケありカ?」
挑発ではなく、純粋に驚いたというようにアルゴが声を挙げる。
対外的にもキバオウ一派が悪人として広く認知されている証左なのだろう。或いは、現在のSAOにおいて軍の情勢はそれほど重要視されていないということでもあるのだろうが、アルゴも軍の動向には世間一般と同様の見解であったらしい。
「オっさんはただ担ぎ上げられてるだけらしい。自分を担ぎ上げてる連中が何をしでかしているのかさえ聞かされないまま今に至るそうだ」
「まぁ確かに、そうじゃないと質問の意味も通らないし、でもナー………」
得心のいかない疑問があるのか、アルゴは腕を組んで唸り出してしまった。
そもそも、軍がどんな悪事を働いているのかという疑問を解き明かすことがキバオウの目的ならば既に達成しているのだ。子供から徴税と称した恐喝を行い、老人を殺害しようとデュエルを申し込んだ。結果はイレギュラーの立て続きでお粗末なものだっただろうが、はじまりの街という《戦うという選択が出来なかった者》をいたぶる行いはとても褒められたものではないだろう。では、キバオウはそれを糺す為に何ができるだろうか。何も出来ないのだ。担ぎ上げられただけの、形骸化した旗印には一切の権限を与えられていない。隠れ蓑か蜥蜴の尻尾程度にしかならないことなど当人が一番理解していて然るべきだ。
つまり、この矛盾を矛盾でなくする情報を、キバオウはまだ語っていないのではないか。そう結論付けるより早く、俺は浮かび上がった疑問を口にしていた。
「なぁオっさん、まだ俺達に話していないことがあるよな」
キバオウが硬直し、沈黙が訪れた。
黙秘権を侵害するつもりはない。そもそも言葉を詰まらせるほどの動揺が何を意味するのか、詳細に至れずとも
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