第3章 儚想のエレジー 2024/10
24話 真意
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
老爺と軍の一件の後、俺達は子供たちの住処である教会まで足を運んだ。
彼等を保護しているというプレイヤーに彼等の身柄を引き渡せば目下の用事に一つ区切りがつくものと考えていたが、当の保護者は先客として訪れた子連れの男女二名と共に軍に囲まれた子供たちを救出しに向かったのだという。その先客とやらが余程の数寄者であることは言うまでもない。殊勝な連中もいたものである。
とはいえ、俺達は彼等に倣うようなことはなく子供達には扉にロックだけ設定するように助言だけくれてやって教会から離れることにした。ティルネルはせめて保護者が戻るまでは子供たちの護衛をしていたいと言っていたのだが、そもそも想定外の出来事の連続で子供のお守りなどする気にはなれないし、キバオウの件もある。俺が言うのもおかしな話だが、今の彼は軍が前線で攻略に邁進していた頃と比較して不安定というか希薄な雰囲気がある。言葉を交わす上でそれを表面上に表わさないのは組織の上に立っていたからこそ培った美徳なのだろうが、今思えばキバオウの申し出に首を横に振っていたならば、ともすれば最後の邂逅となっていたようにさえ思えてならない。
「で、さっきの爺さんは何だと思う?」
後方をとぼとぼと歩くキバオウに質問を投げかける。
状況から考察すれば、喧嘩を売った軍のプレイヤーがすげなく返り討ちになったというだけの他愛のない風景だっただろう。だが、あくまでもあの老爺の言葉を真実とするならば挑発として殺害を仄めかす言葉も用いていたようだ。それは下層の治安維持に路線変更した軍のスタンスにあるまじきものだっただろうし、何よりも気に掛かるのは老爺の殺意だ。
彼の眼差しは、これまで見てきた快楽目的で他のプレイヤーを害する輩とは一線を画するものがあった。鋭くて冷たい、まるで幾重にも鍛えられた刃物めいた雰囲気はこれまでに見たことがない。つまり、今までにない《確固たる殺害目的》を秘めているのだろうが、この考察の真偽を確かめる術はない。となれば、キバオウの見解も聞いておきたい。
「すまん、ありゃあワシにも分からん」
情報源は答える。
しかしそれはある事実を裏付ける証拠となるのだが確証は持てないし、それが確定したからと言って必ずしも何らかの進展に寄与するとも限らない。記憶の片隅にでも留めておく程度で良いだろう。ついでにもう一つだけ確認がてら質問をしてみることにする。
「あの爺さんとやり合ってた連中と、さっきの子供を襲っていた連中は、これまでALSと接触した間には会ったことのない顔だった。誰だ? 何時から軍に所属している?」
ほんの少し息を呑む音が耳に残ったが、一拍置くとキバオウは答える。
「………ワシもシンカーに軍の頭を譲った後のことには口出しせんかったもんやから、ど
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ