西暦編
第七話 タイム・リミットB
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大丈夫だ、あんずにはタマがついてる。向かってくるバーテックスは、タマに全部任せタマえッ! ってな」
「もう……タマっち先輩も、無茶したらだめなんだからね?」
「わかってるって、大丈夫だ」
「……なんでだろう、分かってない気がする」
ぎゅッと手を握り返すと、同じくらいの力で握り返される。
お互いになんとなく笑い合って、
「おやすみ、タマっち先輩」
「ああ、おやすみ、あんず」
二人は、疲れに引き込まれるままに、夢の世界へと旅立った。
二〇十七年十二月十八日。
玄関の戸に鍵をかける。
夕刻、一人衛宮邸を出た士郎は、門の外で一度立ち止まった。
「――――――それじゃあ、行ってくる」
もう、帰ってくることはない。
じきに訪れるだろうこの街の終わりに向けて、魔術使いは足を踏み出す。
二〇十七年十二月十九日。
――――――午前二時。
大空洞には、二つの影があった。
「さて、と……衛宮くん、準備はできてる?」
「いつでも行ける、問題ない」
士郎の答えに頷きを返して、凛は眼下の魔術炉心に目を向ける。
…………酷い状態だ。あれほど膨大な魔力を湛えていた大聖杯は、既に残り火が未練がましく灯っているに過ぎない。もっとも、宝具級の結界を二年半近くも維持させ、破られるたびに張り直させてきたのだから、そう考えればよくもった方なのだろう。
そして、その残り火も今日で尽きる。
「――――――Anfang」
魔術刻印が輝き始める。
彼女の最も万全になる時刻、活性化していく魔力はその証明だ。握りしめた宝石に込められた魔力を最短・最効率の手順で開放し、超伐級の奇跡に挑みかかる。
「――――――Das Fleisch geht、 einmal zum Teildes Sternes zur?ck」
魔術炉心を高速回転、残り僅かな魔力を活性化させ、膨張させる。
これで、もう後には退けなくなった。
次々に石を消費しながら、凛は大聖杯への干渉を続行する。
「まずは、一つ…………ッ!!」
初めの願望を入力すると同時に、大聖杯の魔力が大きく目減りした。
間髪入れず、願望器に働きかける。
「次! 行くわよ、衛宮くん!」
「ああ、タイミングは任せる――――――とばしてくれ!」
第二の願望が形となる。
魔力の消費は、初めのものとは比較にならないほど少ない。ただ、効果ははっきりと表れた。
大空洞から、士郎の姿が消える。
魔法にも等しい空間転移。
刻々と減り続ける魔力を感じながら、凛は冷静にその時を待つ。
………降り立った先は、完全に異界と化していた。
瀬戸大橋、四国と本州を繋ぐ十の橋
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