西暦編
第七話 タイム・リミットB
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……明日は、訓練じゃなくて、作戦の確認だけ……よね?」
「ええ、その予定のはずです」
鎌を折り畳んで、布袋にしまう。
訓練場を出る直前、訓練中に言いそびれていたことを思い出した。
「……乃木さん、いいかしら……?」
「はい? 何ですか?」
まだ、例の型稽古を再開する前だったのだろう。
振り返った若葉の視線が、千景の視線と交錯する。
「もう少し、砕けた感じで話してくれればいいから……あなたも、多分……その方が指示しやすいでしょう……?」
それだけ告げて、今度こそ千景は訓練場を後にする。
昼間、友奈や球子、杏と一緒の時にはどうしても言えなかった言葉。
それを伝えられて良かったと、千景は微かに笑った。
夜になると、杏子と球子はよく一緒の部屋で過ごしていた。
大抵が、杏の部屋に球子が寝る前まで入り浸るだけだが、時々同じ部屋で寝ることもある。
今夜は、その時々の日だ。
「あんず〜、まだ寝ないのか〜?」
「うん、もうちょっとだから」
何やら熱心にノートへ書き続ける杏の姿を、球子はベッドの上からぼんやりと眺めていた。
ここ数日、もっと言えば連携訓練が始まってから、杏が活き活きとし始めた気がする。前よりは少し積極的に訓練へ参加するようになったし、訓練中の発言はずっと多くなった。
いいことだ、と思う反面、球子には少し不安に思う変化だ。
杏は、球子にとって護ると決めた女の子だ。
戦うことに対して、後ろ向きになるよりは前向きになった方がいいのは分かっている。けれど、行き過ぎて無鉄砲に突っ込むようになってしまうんじゃないかと、なんとなく心配になってしまう。
心配のし過ぎ、なのだろうか?
悩み過ぎて唸り声を上げる球子を他所に、杏は満足したのかようやくノートを閉じた。
「お待たせ、いつもより色々思いついちゃって」
「まったくだ! まあいい、じゃあ一緒に寝るぞーッ!」
「元気いっぱいだなぁ、タマっち先輩は」
杏が苦笑しながらベッドに上がってくる。
ベッドは一人用なのだが、球子が小柄なおかげで、工夫すれば二人でも十分眠れる広さがあった。
「じゃあ、電気消すよー」
「おー」
二人で身を寄せ合うと、すぐに布団の中が暖かくなってくる。
ほんの数日前、タマっち先輩はあったかいな〜、冬でも寒くなくていいな〜、と杏が思わず呟いたほどの暖房性能。ちなみに、球子はこの発言に、タマは小さな子どもか!? それとも湯たんぽか!? と噛みついたのだが、それはそれ、暖かいことに変わりはない。
「……そういえば、あさってだな、作戦」
「うん……そうだね」
球子の言葉に、手が強く握られる。
横を見ると、杏の顔が見えた。少し不安な表情に、球子は思わず苦笑する。
「なんだ、怖いのか〜?
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