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勇者たちの歴史
西暦編
第六話 タイム・リミットA
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わたしたちの受け入れと、勇者による援護を要請するわ。対価は、大社への所属と協力、それと――――――勇者の教官なんて、どうかしら?」
「え、えぇ…………ッ! それっt…………むぐッ!」
 大声を出しかけた口を手で塞ぎつつ、反応を窺う。
 教官の件は、既に士郎も了承済みだ。中東で活動していた頃に経験があると言っていたが、詳しいことは凛にも分からない。ただ、四国の増強戦力よりかは危険性が低く、かつ勇者たちの戦力も上がるのなら問題はないはずだ。
「どうかしら、これでもまだ足りない?」
『いえ――――――十分です。次の通信で、計画の詳細を提示してください。大社も、冬木の脱出をできる限りサポートします』
「そう、なら今日はこの辺りで。準備が多すぎて、人手がまるで足りてないものだから――――――、はぁ…………ぁ」
 通信が切れる。
 凛は大きく息を吐くと、身体を伸ばしつつ立ち上がった。
「それで。士郎からは何か、返信あった?」
「うーん、まだなにも……あ、一通だけ来てます」
 桜がメール機能を使って、受信したメッセージを開く。
 そこには、藤村組と協力して準備を進めていくこと、そして夕方から脱出に関する説明を柳洞寺で行うと決まったことが書かれていた。
 おそらく、桜が送信した通信の概要を基に、会議を進めていたのだろう。こうした時、藤村組の繋がりの深い士郎の存在は非常に大きい。
「ふむふむ。なるほど、よくもまあうまくまとめたものね」
「そうですね、もう少し会議は長引くかと思っていました」
 顔を合わせて、笑い合う。
 ここまで順調だ。あとは、成功させる為に準備をしていくしかない。
「よし?―――――じゃあ、やるわよ桜!」
「はい、姉さん!」
 
 
 冬木脱出まで、あと七日。
 
 
 
 
 
 そして同時刻、彼女も動いていた。
 通信の後、大社からの説明は一応あった。
 冬木の推測された現状から通信を傍受していたこと、諏訪との通信は一切盗み聞くようなことはしていないということ、要望への回答がここまで伸びてしまったこと。
 話を聞いてなお、若葉の内心では苛立ちが渦巻いていた。
 一つは大社に対してだが、もう一つは自分自身に対して。
 何事にも報いを。それが乃木の生き様だ。
 ならば――――――過ちを犯した自分は、大社は、何ができる?
 何をすればいい?
「……答えは、一つしかない……」
 教室の扉を開ける。
 まだ昼休みの最中、教壇の前に立った若葉は五人の仲間たちへ顔を向けた。
「少し、いいだろうか。皆に、聞いて欲しい話がある――――――、」
 
 
 こうして、運命は流転する。
 
 せめて、彼らの未来にささやかな、けれど確かな幸福があることを…………
 
 

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