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勇者たちの歴史
西暦編
第六話 タイム・リミットA
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自分たちの弱みを曝す。
 今回の交渉で重要なのは、冬木が限界だと認識させることと、冬木側の持つ特異性を相手に有用だと認めさせること。
 前者については、ほぼ果たしたといえるだろう。
 ならば、残るは後者――――――ここからが本当の交渉になる。
「それで、さっそくで悪いのだけれど、三カ月以上前に伝えてもらった要望について、回答をもらってもいいかしら? 当然、今この場で」
『えぇ、どうぞ? といっても、数日前にようやく回答がまとまったので、今日の通信の最後にでも伝えてもらうつもりだったのですが』
 事前に送っていた要望は、五項目。
 その一つひとつを確認していく。男は、言い訳のような言葉を裏付けるように、ぼかすことなくそれぞれに答えを返した。
 
 一:四国には現在、他地域の人間を受け入れる余裕があるか。
 A:通信で把握できている人数程度であれば、問題なく受け入れられる。
 二:四国の結界を、部分的に解くことは可能か。あるいは、魔術による転移を阻害しないよう組み替えることはできるか。
 A:結界は神樹によって作り出されたものであり、人間の手で自由に組み替えられるものではない。ただ、嘆願によって、結界の一部を物理的に開くことは可能である。
 三:四国の勇者を護衛に出すことはできるか。
 A:彼女らは実戦経験に乏しく、四国の防衛も考慮するに、あまり長距離を移動させることは大社として容認できない。
 四:大社に魔術師はどの程度所属しているか。
 A:百程度だが、ほとんどは三流にも満たない呪術師まがいの者たちであり、魔術協会などに所属するような一流のものはいない。
 五:瀬戸大橋は崩落していないか。
 A:使用はできないが、崩落の危険性もないと考えている。
 
『……回答は、以上でよろしかったでしょうか?』
「えぇ。それにしても、魔術協会からも警戒対象にされていた組織の内情が、そんなものだったのは驚きだったわ」
『過剰な評価です。我々は、根源さえ目指していなかったのですから』
 男の言葉に、思わず凛は眉を顰めた。
 魔術師とは根源を目指し、その手段を模索する存在だ。それが集まってできた魔術組織が根源を目指さないなど、信じられるものではない。
 そして、根源を目指さない異端な魔術組織など、魔術協会に目を付けられないはずがない。危険性ではなく、異常性から警戒対象に指定されていたのだろうか?
「十分あり得るわね……」
『? 何の話です?』
「独り言よ、それで――――――こちらからの提案が、ひとつあるわ」
『ほう、なんでしょうか?』
 男の声に興味の色が浮かんだ。
 それを見逃さず、凛は即座に畳みかける。
「今日から一週間後、つまり十九日に、わたしたちは冬木を捨て、四国への脱出を計画している。その時に、四国側には
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