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勇者たちの歴史
西暦編
第五話 タイム・リミット@
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慨していたが」
 笑いながら、歌野との会話を思い返していた若葉だったが、不意に小さな疑問が生じた。
「――――そういえば、冬木はバーテックスの襲来をどうやって防いでいるんだろうな」
「冬木、ですか……?」
 ひなたの確認に頷く。
 時々、思考の海に浮かんできては、深く考えてこなかった疑問だった。
「えっと、確か結界を張っている、という話じゃありませんでしたか?」
「そうなんだが、その結界も近頃はよく破られ、侵入されることも珍しくないらしい。それで、侵入してきたバーテックスを、一人の人間が追い返しているらしいんだが……」
 ここが本題だ。
 若葉は、ごく当たり前な疑問を口にする。
「一体、どうやって追い返しているんだ……? 冬木には、勇者は一人もいないはずなのに」
「確かに、考えてみればそうですね」
 二人は、揃って首を傾げた。
 大社からは、バーテックスは勇者や、勇者の用いる武器以外では傷つけることもできない存在だと聞かされている。それは近代火器も例外ではなく、実際に自衛隊の兵器ではバーテックスの一体も倒すことは叶わなかった。
 だというのに、勇者でもない人間が、たった一人でどうやってバーテックスに対抗しているのだろうか?
「例の、遠坂凛さんが何かしているんじゃないですか? 大社の話では、彼女が結界を張ったと言っていましたし」
 ひなたの推測を、若葉は頭を振って否定する。
「いや、あの口ぶりは彼女自身のことを話している、という感じではなかったと思う。多分だが――――彼女とは別に、勇者の役を担う人物がいる」
 はっきりと意識すると、勇者の代わりをしている人間に興味が湧いてきた。
 一体、どんな手段でバーテックスと戦っているのか。
 年上なのか、年下なのか。男性なのか、女性なのか。武闘派なのか、頭脳派なのか。柔和な性格なのか、粗暴なのか、冷静なのか。色々な人物像を思い描いては、消していく。
 これは、いい話のきっかけが見つかったかもしれない。
「そうだな……今度の通信の時に、遠坂さんに聞いてみよう。もしかしたら、私たちの訓練や戦術を発展させられる情報を教えてもらえるかもしれない」
「確かに、もしかしたら勇者にならなくても、バーテックスと戦える方法があるのかも知れません。そうなれば、人類側の戦力は一気に膨れ上がりますし」
 ひなたの同意を得られたことで、若葉の方針は定まった。
 
 ――――必ず、このきっかけをものにしてみせる。
 
 四国の勇者は、静かに決意を固める。
 
 
 
 
 同時刻、冬木市の遠坂邸。
 遠坂凛は、一向に繋がる様子のない通信用礼装を前に立ち尽くしていた。
「…………信じられない」
 目の前の事実が受け入れられない。
 しかし、状況は明確な答えを指し示している。疑う
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